変質してしまった韓国の公休日『ハングルの日』、増加する「排斥」の雰囲気

2020年10月22日(木)17時30分
崔碩栄(チェ・ソギョン)

これらの日本語排斥運動は年を重ねるごとにエスカレートしている。今や日本式の漢字語を韓国式の発音にして使っていたハリン(割引)、ウェチュル(外出)、ソガム(所感)といった単語までも変えなければならないといった運動が毎年10月になる度に繰り返されている。

例えば、MBCというテレビ放送局では今年の10月8日、ハングルの日に合わせ「『幼稚園』は日帝の残渣であるから『幼児学校』と呼ぶべきだ」と報道した。数十年に渡り何の問題もなしに使ってきた『幼稚園』は日本語由来であるから、純粋な韓国のことばに変えなければならないという幼稚園教師労働組合の主張を紹介したものだった。

だが、正確に言えばこれは「ハングルの日」とは全く関係のない問題だ。この単語は日本から入ってきた言葉だったが、韓国の文字である「ハングル」で記されている「韓国語」だからだ。「幼稚園」問題が意味するものは韓国語に対する愛情ではなく、「日本由来のもの」に対する「敵愾心」があるだけだ。

北朝鮮式の言語習慣に同化していく韓国?

実は、このように韓国が純粋な韓国語、韓国式語彙に固執するのは、北朝鮮の影響だとする見解もある。北朝鮮は外来語を使うことを極端に嫌い、朝鮮式の言葉に固執する国だ。「シナリオ」を「映画文学」、「ソプラノ」を「女性高音」、サッカーの「ペナルティーキック」は「ボルチャギ(罰蹴り)」という風に「主体的」な造語を使用し外来語使用は(ゼロではないにせよ)最小化している。70年以上も前の戦時下にあった日本で野球のストライクを「良し」、ボールを「ダメ」としていたのと同じようなものなのかもしれない。

韓国では毎年ハングルの日を迎えるたびに外来語、特に日本語排斥運動が盛り上がり、 有名人がTVに出たときに日本式の語彙を使ったのを槍玉にあげ、「非国民」扱いでバッシングに走るのを見ると、北朝鮮か戦時中の日本を踏襲しているかのようで、ぞっとする。

<政府が運営している政策広報のSNSで発信している 北朝鮮語クイズ。文在寅政権に入ってから韓国政府による北朝鮮の言葉を宣伝、広報が増えている >

毎年10月になるたびにこの騒動が起こるのは、韓国人たちが過去に比べ漢字や日本語に対し、理解や関心が低くなっていることに原因があるのかもしれない。日本式語彙の排斥を求める人たちは、どれが日本式の語彙で、どれか日本式の語彙ではないのかを知らないために、このような軽率な主張をするのだと思われるからだ。

例えば、「幼稚園」の代わりに主張された「幼児学校」を推進する団体である「労働組合」も日本語だ。これを報道した放送局の名(MBC:文化放送)も日本語(文化、放送)に由来した言葉だ。日本語由来のことばを全て無くそうとすれば多くの団体や会社の名前も変えなければならない。漢字や日本語をきちんと理解する人であれば、このような主張はするはずもない。何故ならば、彼らは、日本式造語が無ければ今や韓国での言語活動は不可能だということが理解できるはずだからだ。

私は時々、こんなバカげた想像をしてみる。毎年ハングルの日は「日本式語彙を使わない日」と定めて、官民が一体となって大々的なイベントを開くという想像だ。なんなら日本式語彙を使用した者には罰ゲームをさせるとか、軽い罰金刑にでもしたら面白いだろう。

そうすれば、学校では授業を進めることはできなくなるだろうし、法廷では裁判を始めることすらできなくなるだろう(法律用語はほとんど日本語から輸入された)。そして、テレビ放送できるニュースは手話ニュースだけになり、全国の建築現場は休業するしかなくなるに違いない(韓国で日本語が最も多く使われている業種は建設、建築業界だ)。

国家的には大きな損害が出るだろうが、排他的考えに傾きつつある韓国が一つ、重大な教訓を得らえるとすれば、そこには十分な価値がある、そんな願望にも似た想像をしてしまうのだ。

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