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日本文化

日本文化はマンガやサムライを超えている...元文化庁長官がオランダの学生に勇気づけられた「ある一言」とは?

2026年01月21日(水)11時00分
近藤誠一(元文化庁長官、国際ファッション専門職大学学長)
富士山

taka1022-Shutterstock


<海外が日本文化に関心を抱いていることに、日本人はもっと自信をもっていい>


ライデン大学にて

「え? マンガやアニメに関心があったのではないの?」

「マンガ、アニメはもちろん好きですけど、私は、日本人がこんなに深い文化を作り上げてきた歴史を知りたいんです。それも日本文化史の研究というより、ひとつの分野、例えば建築の研究を深めることで探究したいんです」

オランダのアムステルダム郊外にあるライデン大学の日本学科クラス。2025年12月に3日連続で行った英語による日本文化の授業の後、教壇にやってきた背の高い女子学生とのやりとりだ。

オランダは鎖国中も日本との交流を続けられた好機を生かして日本研究を深めた。中でもライデン大学は世界に先駆けて日本学のコースをつくり多くの日本学者を輩出している。

そして筆者が会長を務めるJAPA(美術文化振興協会。福田赳夫元総理の「福田ドクトリン」に基づいて設置された国際交流の公益財団法人)は、20年前にこの大学との交流を始め、以来日本文化の伝達を地道に続けてきた。

戦後の安定したリベラルな秩序が崩れて、世界の振り子が急速にリアリズムに傾き、同時にAIの目覚ましい進化で、他国の文化の地道な研究など「タイパ」が悪いことは相手にされにくい中で、ヨーロッパの小国の大学生が自国の歴史をしっかりと踏まえ、このような質問をしたのだ。

授業では日本文化の一般論ではなく、世界遺産の富士山、桂離宮、能のような有形・無形の文化財を入り口に日本文化の本質を説明した。しかしヨーロッパの学生たちが漫画・アニメを超えて、どこまで分かってくれるかが不安だった。

講義を無事に終え、この学生の言葉を最大の成果として胸に抱いて帰国した。そして手にしたのが、『アスティオン』103号の「発信する日本文化」特集だ。この特集は茶道、華道、和音楽、和食、映画など多くの分野を対象にしている。

ページをめくると、共感を覚えるキーワードが次々と出てくる。自然との一体感や自然から学ぶ美、それも永遠に固定された絶対的美ではなく、「移ろい」を愛で、「間」や「余白」を重んじるこころの美、調和の大切さ、そして侘び、さびを愛しむ深みだ。

そして「道」(どう)によって育まれる精神性、自己陶冶の心がけ、技の身体性、その継承方法など。ライデン大学の授業で学生たちに伝えたかったことと大いに重なる。

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