戦争映画の概念を変えた『ダンケルク』

2017年9月8日(金)15時15分
ノア・バーラッキー

「正当な戦争」なるものがあるとすれば、連合軍にとっての第二次大戦はまさにそれだろう。緊迫感を盛り上げる大音量のサウンドトラックは、これが偉大な作戦であることを絶えず思い出させる。

だが第二次大戦が正当な戦争、もしくは避けられない戦争だったとしても、その後にアメリカが戦った戦争の多くはそうではない。にもかかわらずハリウッドは、ベトナムやイラクその他の戦争を避けられない戦いであるかのように描いてきた。

【参考記事】『ハクソー・リッジ』1度も武器を取らず仲間を救った「臆病者」

たとえ戦争の残虐性を描いた映画でも、派手な戦闘シーンは観客を魅了する。人々はヒーローに憧れ、その他大勢の民間人ではなく、「選ばれし者たち」の仲間入りをしたいと思う。

だが『ダンケルク』の兵士たちは選ばれし者ではない。おじけづき、逃げ惑うその他大勢だ。兵士一人一人の置かれた状況にリアルに肉薄した描写で、ノーランは戦争映画の新たな可能性を開いた。

本誌9月5日発売最新号掲載

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