中国一帯一路、パキスタン建設事業を欧米からもぎ取った「力技」

2017年6月18日(日)10時57分

パキスタン政府は昨年、同国初の高圧送電線の建設に向けて、米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)、独複合企業シーメンス、スイスの重電大手ABBと非公式な協議を行った。

だが中国の配電大手「国家電網」が欧米ライバル勢の半分の工期で実現させると請け合い、総額17億ドル(1869億円)のプロジェクト契約をもぎ取った。

パキスタンや他の多くの国で、これは「よくある話」だ。

中国政府が、アジアからアフリカ、欧州までを陸路や海路で結び、一大経済圏を築くシルクロード「一帯一路」構想を今後10年の国家プロジェクトと位置付けるなかで、中国企業は、一帯のインフラ整備計画の「甘い汁」を独占しようとしている。

中国国営メディアによると、昨年だけで中国企業は一帯一路の周辺国で1260億ドル(約13兆8600億円)ものプロジェクト契約を締結した。

地理的にも中国政府の「シルクロード」計画の中央に位置するパキスタンでは、昨年だけで280億ドル以上の契約が、現地企業と合弁を組んだ中国企業との間で結ばれた。パキスタンのアッサン・イクバル計画改革相は、今後数年で200億ドル以上の新規投資が見込まれている、とロイターの取材に対し今週明らかにした。

パキスタン政府は先月、中国との合同プロジェクトで初となる、出力1300メガワットの石炭火力発電所の完成を記念し、現地紙に全面広告を出した。こうした施設としては記録的早さの22カ月で完成したという。発電所は、中国国有の山東華能と山東如意化技集団(山東省)が所有する。

「中国株式会社」の最大の強みは、政府の後押しを受けた中国の銀行が、シルクロード関連のプロジェクト融資を最優先で実行することにあると、両国政府の関係者は見ている。

そしてこのことは、1億9000万の国民が毎日数時間も停電に見舞われているパキスタンで、停電をなくすために送電線網を整備する今回の様なプロジェクトでは、重大な意味を持つ。

「(中国企業は)中国政府の支援を受けているため、その点で有利だ」と、今年初めまでパキスタンの水利電力省幹部だったモハマド・ユナス・ダーガ氏は指摘する。ダーガ氏は商務省に異動する前、ロイターに対し、中国政府が融資審査を前倒ししており、銀行や保険会社にデュー・ディリジェンスの手続きを急がせていると述べた。

中国政府の官僚は、個別の融資審査についてコメントに応じなかった。

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