ドイツの親子に学ぶ正しい実家暮らしのコツ

2016年7月6日(水)16時00分
レベッカ・シューマン

<成人した子供が親元で暮らすなんて情けないというアメリカの価値観は変わるべき。ドイツではパートナーとの生活を始めるまで親元で暮らすのが当たり前>

 18~34歳のアメリカ人の32.1%が親と同居している――5月にピュー・リサーチセンターが発表した統計によって、実家暮らしのアメリカ人の割合が過去100年間で最高を記録し、結婚または同棲している人の割合(31.6%)さえも上回っていることが明らかになった。

 いい年をして、親元で暮らすなんて情けない? 確かにアメリカのメディアは「空の巣にひなが舞い戻ってきた」「期待できるのは怠け者の子供が食事を作ってくれることだけ」と書き立てている。だが私たちはそろそろそんな発想を脱し、親子の同居を肯定的に見直すべきではないか。問題は一緒に住んでいるか否かではなく、どんな親子関係を築くかにあるのだから。

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 アメリカ人は長年、子供が親元を離れることが子育て成功の証しと信じてきた。だが、それはアメリカ独特の社会通念にすぎない。欧州では18~29歳の若者の半数近くが実家暮らしだ。

 例えばドイツでは、18~24歳の女性の70.8%、男性の83.5%が親元で暮らしている。25~34歳ではその割合は女性が9.2%、男性が18.7%に減るが、これは大半の人が結婚か同棲で実家を出るため。実家暮らしは生活費が節約できて実用的だと考える彼らにとっては、パートナーと生活を始めるまで親元で暮らすのが当たり前だ(ドイツ人にとって「実用的」は最大の褒め言葉)。

 しかも、これはメルケル政権の緊縮財政のあおりを受けて最近始まったトレンドではない。ドイツの親たちはアメリカ人と違って、子供たちを「追い出す」ことにこだわらない。驚くなかれ、彼らは成人したわが子との同居生活を、他人とシェアハウスで暮らすのと同じ感覚で捉えている。

 子供は自分の分の掃除や買い物を自分で行い、収入があれば家賃や生活費も負担する。アメリカ人が親元を離れないわが子に不満を募らせるのは単に、彼らを子供扱いするのをやめる方法を知らないためだろう。

 子育て期の接し方も違う。子供の独立心と自主性を伸ばすことを重視するドイツ人は、危険満載のアスレチックで遊ばせたり、1人きりで電車や徒歩で通学させたりする。個人の空間を大切にするため、子供部屋の扉は閉めておくのが普通だ。

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