「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
戦後、日本では戦前の朝鮮半島の植民地支配について「いつまで韓国に謝り続けないといけないのか」という不満が政治家の言動などで表面化します。そして、韓国側の強い怒りをかうという展開を繰り返してきました。こうした問題の背景には、地理的環境の大きな違いがあります。
共通の脅威があると、関係はよくなる
では日韓関係は今後、どうなるのでしょうか。国と国との関係を強化させるときに、共通の敵を持つことほど強い推進力はありません。
第2次大戦のとき、それまで敵対していたイギリスとソ連は、ナチスドイツと戦うために同盟を結びました。ただ戦後に共通の敵がいなくなるとアメリカやイギリスはソ連との対立を深め、冷戦時代を迎えることになりました。
現在、民主主義国家である日本と韓国は非民主的な中国やロシアの脅威にさらされています。対立を深める米国と中国のはざまに位置しているという点でも共通しています。
SNSを通じた中国やロシア発の日本や韓国への偽情報工作は、年々増え続けています。日韓はトランプ米政権の高関税政策や防衛費の拡大圧力という共通の課題にも直面しています。互いに対立する余裕が乏しい環境が、日韓の関係改善を後押しすることになります。
戦後80年を経て、植民地時代の体験者が減っていることも無視できない要因です。韓国では日本の植民地支配を非難する歴史教育が続いていますが、学校で学ぶことと、直接の負の体験では重みは大きく異なります。
韓国の国力の向上やお互いを往来する観光客も増加しています。国民の間で負の記憶から離れて自然体で接する風潮も広がっています。李在明(イ・ジェミョン)大統領は、反日意識が強い革新勢力の出身です。しかし就任後、日本との関係を重視する「実用外交」を掲げたのはこうした背景があります。
ただ、李大統領の側近には、いまだに北朝鮮やロシアとの関係を重視する「融和派」のグループが存在します。
2025年10月に韓国で開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向けた日本とアメリカ、韓国の外交折衝では、韓国の高官が「三国の造船分野の協力に北朝鮮やロシアを含めるべきだ」と主張し、アメリカの代表をあぜんとさせる一幕もありました。
日米関係がきしんだり、北朝鮮が韓国にすり寄ってくるなど状況が変われば、一時的にも日韓関係が再び悪化するリスクは残っています。
田中 孝幸(Takayuki Tanaka)
1998年日本経済新聞社入社。政治部、経済部、国際部を経てモスクワ支局員、ウィーン支局長など歴任。世界40 カ国以上で現場取材し、政財界の要人や軍人、文化人などと広い人脈を築いた。現在、編集委員兼論説委員。大学時代にボスニア内戦を現地で研究。ロシアが侵略中のウクライナでは現地から戦争の実態を報道し、2025 年11 月にロシア政府から同国への入国禁止の制裁対象に指定された。大のネコ好き。40 代で泳げるようになった。著書『13歳からの地政学』(東洋経済新報社)で八重洲本大賞、読者が選ぶビジネス書グランプリ2023・リベラルアーツ部門賞など受賞。
田中孝幸[著]
日経BP/日本経済新聞出版[刊]
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