最新記事
日本社会

定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな治安状況

2025年3月5日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)
都心の繁華街

定住人口あたりで算出すると千代田区の犯罪率がダントツで高いが……(画像はイメージ写真) photoAC

<都内では通勤・通学などによる地域移動が激しく、定住人口と昼間人口の間に極めて大きな差異がある>

地域の治安を測る指標として犯罪率がある。通常は、ある地域内で認知された事件の数を当該地域の人口で割って算出される。人口1万人あたり何件という具合だ。このやり方で東京都内23区の犯罪率を出すと、都心部で高い。千代田区がダントツだ。

だが都心は、昼間に他地域から大量に人口が流入してくるので、それだけ犯罪の件数は多くなる。千代田区だと、昼間人口は定住人口(夜間人口)の14倍にも膨れ上がる(『国勢調査』2020年)。定住人口ベースだと、犯罪率がべらぼうに高くなるのは当然だ。


都内の場合、通勤・通学による地域移動が激しいので、その影響を除く必要がある。そのためには、昼間人口をベースにするのがいいだろう。昼間人口とは、定住人口と流入人口の合算から、流出人口を引いた数だ。流入人口は、他地域から当該区の職場や学校に通っている人で、流出人口は、当該区から他地域に通勤・通学している人をさす。

この方法により、都内23区の犯罪発生率を計算してみた。<図1>は、高い順に並べたランキングだ。

newsweekjp20250305013333-c8f0a3982e78e146f1415caf00a5bde47591f0fe.png

昼間人口1万人あたりで見ると、犯罪件数が最も多いのは台東区、その次は豊島区、3位は葛飾区となっている。地図に落とすとはっきりするが、上位の区は城東エリアで多い。渋谷や新宿といった繁華街を抱える区も、犯罪が比較的多い。

これに対して、都心のエリアでは犯罪率が低い。最も低いのは千代田区で、台東区の4分の1だ。単純な定住人口ベースの犯罪率とは結果がかなり違うが、信頼度はこちらのほうが高いとみていいだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

関税の影響を評価するのは時期尚早=FRB金融政策報

ビジネス

米株式ファンドから大幅に資金流出 中東緊迫化と関税

ビジネス

フィラデルフィア連銀製造業指数、3カ月連続マイナス

ワールド

IAEA事務局長「最大限の自制を」、イラン核施設へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    全ての生物は「光」を放っていることが判明...死ねば…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 8
    「巨大キノコ雲」が空を覆う瞬間...レウォトビ火山の…
  • 9
    「まさかの敗北」ロシアの消耗とプーチンの誤算...プ…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中