最新記事
ルワンダ

ルワンダの大統領選「カガメ氏が4選」得票率は99%、無敵の大統領は英雄か独裁者か

The Forever President

2024年7月29日(月)15時35分
ノズモット・グバダモシ(ジャーナリスト)
ルワンダの大統領選「カガメ氏が4選」得票率は99%、無敵の大統領は英雄か独裁者か

虐殺後の復興を主導したとして国民から評価されているカガメ大統領 JEAN BIZIMANAーREUTERS

<虐殺を終わらせた現職のカガメ大統領が4選。経済成長の裏で民主的な投票ではあり得ない強権支配。ほかの候補者はたいてい失格、毎回、実質的に対抗馬はいない...>

ルワンダの大統領選が7月15日に行われ、現職のポール・カガメ大統領が4度目の当選を果たした。カガメの得票率は99%。対立相手のほとんどは立候補が認められず、事実上、不戦勝だった。

カガメは1994年、ツチ人主体の反政府組織「ルワンダ愛国戦線」を率いてフツ人の過激派に勝利し、ツチ人を中心に80万人以上が殺害されたジェノサイド(集団虐殺)を100日間で終結させた。


その後まもなく副大統領に就任し、2000年、前任者の辞任に伴い、議会によって大統領に選出された。

以来、カガメは選挙で連勝している。前回の17年の大統領選でも得票率は約99%で、これは民主的な投票ではあり得ないとの指摘もある。カガメを声高に批判する候補者はさまざまな理由でたいてい失格となるため、毎回、実質的に対抗馬はいない。

今回の選挙では、緑の党のフランク・ハビネザ党首と、元ジャーナリストで無所属のフィリップ・ンパイマナの2人が立候補を認められたが(両者は前回選挙にも出馬)、政治アナリストによれば、彼らには勝利するための資金と選挙運動手段がない。

ルワンダ国民にとってカガメは、民族分裂を終わらせたビジョナリーであり、独裁者だ。多くの国民は、電気、舗装道路といった重要な公共サービスへのアクセスが拡大するなど、カガメの下で実現した経済変革を称賛している。

カガメは汚職に関与した閣僚を罷免し、結果を出さない者には責任を追及してきた。国際団体トランスペアレンシー・インターナショナルによると、ルワンダはアフリカで最も汚職の少ない国の1つだ。

国民は権威主義を受け入れ、不安定さよりも効率性を求めていると専門家らはみている。ルワンダには報道の自由がなく、人権団体や反政府活動家は、カガメが国外で反体制派の暗殺を組織していると非難する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、17年の大統領選以降、少なくとも野党議員5人と反体制派やジャーナリスト4人が死亡、あるいは行方不明になっている。

援助が「テロの輸出」に

他国からの多額の援助にもかかわらず、ルワンダは依然として貧しく、マリやニジェールのような紛争に直面しているサハラ南縁諸国と同レベルだ。

国家予算の40%以上を援助に頼っており、外国援助の少なくとも一部は、近隣諸国への「テロの輸出」に使われているとも指摘されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、原油安でインフレ懸念緩和

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・スイスフランで上昇、中東

ワールド

中国主席、カザフ大統領と会談 貿易・投資で協力へ=

ワールド

G7、ウクライナ・中東巡る結束に影 トランプ氏のロ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中