最新記事
ハッカー

友好国でも容赦せず! 北朝鮮ハッカー、ロシア・ミサイル会社に侵入しバックドア仕掛ける

2023年8月7日(月)21時03分
ロイター
金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのショイグ国防相

北朝鮮のハッカー集団が、少なくとも5カ月間にわたってロシアのミサイル会社のコンピューターネットワークに不正に侵入していたことが明らかになった。ロイターが入手したデータを専門家が分析した。写真は金正恩朝鮮労働党総書記とロシアのショイグ国防相。KCNA提供(2023年 ロイター)

北朝鮮のハッカー集団が、少なくとも5カ月間にわたってロシアのミサイル会社のコンピューターネットワークに不正に侵入していたことが明らかになった。ロイターが入手したデータを専門家が分析した。

北朝鮮政府とつながりのあるハッカー集団「スカークラフト」と「ラザルス」が、ロケット設計企業NPOマシノストロイェニヤのシステムに「バックドア」と呼ばれる侵入路を密かにインストールしていた。

 
 
 
 

ハッカーがデータを持ち出したかどうかや、どのような情報が閲覧されたかをロイターは特定できなかった。ネットワークへの進入の数カ月後に北朝鮮は弾道ミサイル開発に関する進展を公表したが、これがハッキングと関連があるかは明らかでない。

北朝鮮は重要な技術を入手するためにロシアのような友好国も標的にすることが示されたと専門家は指摘している。

NPOマシノストロイェニヤ、ワシントンのロシア大使館、北朝鮮の国連代表部はいずれもコメントの要請に応じていない。

ミサイル専門家によれば、標的となったNPOマシノストロイェニヤは、極超音速ミサイル、人工衛星技術、次世代弾道兵器のパイオニア的存在で、これらの分野に北朝鮮は強い関心を寄せている。

ロイターが入手した内部データによると、システムへの侵入は2021年後半ごろに始まり、ITエンジニアがハッカーの活動を検知した22年5月まで続いた。

NPOマシノストロイェニヤは冷戦時代、ロシアの宇宙計画のための主要な衛星メーカーとなり、巡航ミサイルの製造でも知られる。

北朝鮮のハッキングを最初に発見したのは米サイバーセキュリティ会社センチネルワンで、同社の研究者トム・ヘーゲル氏はハッカーが電子メールを読み取ったり、ネットワーク間を移動したり、データを抽出したりすることが可能だったと述べた。

NPOマシノストロイェニヤのITスタッフが北朝鮮の攻撃を調査しようとしている最中に誤って内部の通信を漏らしたことを同氏のチームが発見し、ハッキングを知ったという。

ロシアのプーチン大統領は19年にNPOマシノストロイェニヤが開発した極超音速巡航ミサイル「ジルコン」について「有望な新製品」と述べている。

ミサイルの専門家で北朝鮮のミサイル計画に詳しいマーカス・ミラー氏は、北朝鮮のハッカーがジルコンに関する情報を入手しても、直ちに同ミサイルを生産する能力を得られるとは限らないと述べた。

しかし専門家は同社のミサイルの燃料関連の製造プロセスなどにも北朝鮮は関心を持っている可能性があるとしている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ヘルスケア
腸内環境の解析技術「PMAS」で、「健康寿命の延伸」につなげる...日韓タッグで健康づくりに革命を
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中