最新記事
アメリカ社会

中国を批判したら、即「アジア人差別!」...すぐに「個人攻撃」する、行き過ぎた社会

I Was Forced Out of College

2023年6月15日(木)14時40分
KJ・ライナム(「リーダーシップ・インスティテュート」イベントコーディネーター)
KJ・ライナム

多様なバックグラウンドを理解するには議論や学びが必要だという筆者 KJ LYNUM

<ウイグル人への人権侵害を批判すると、「アジア系の人々に対するヘイト」と大学内から攻撃を受け、やむなく退学に。多角的な視点で議論できるような場であってほしい>

いつだって私は言論の自由の熱烈な信奉者だった。自分たちの経験について話し合い、学び、それぞれの多様なバックグラウンドを理解することが私たちの存在を形作り、人生の目標へと導いていく。

人はなぜ特定の信念を持つのかについて興味があったから、米エマーソン大学に入ってすぐに政治団体に参加しようと思ったのは自分にとって自然なことだった。

保守派の学生団体に入って数カ月後、2021年秋学期の初めにイベントを開催した。22年北京冬季五輪を踏まえ、新疆ウイグル自治区のウイグル人に対する中国共産党の人権侵害を批判するものだった。

私たちはステッカーを配った。中国共産党が犯した数々の残虐行為について議論する教育的イベントのつもりだったのに、最終的にそれはアジア系の人々に対する「ヘイト(憎悪)」だと曲解された。

SNSの投稿を機に、翌日には大学の学長が「反アジアの偏見と憎悪は非難されるべき」と声明を出した。すぐに大学中の学生から何百ものメッセージが届き、SNSで私は「うさんくさい」「うんざりするほど幼稚」と言われた。

この出来事から3カ月半の間、私はかつて経験したことのないほどの人々の憎悪や攻撃、早合点を経験した。

大学のクラスでも、私に対する扱いが劇的に変わった。授業に加わろうとしてもうまくいかず、私は自分の意見が言えなくなっていった。教授や学生は私の存在に気付かないか、すぐに標的にしてくるかのどちらかのようだった。

闘う価値のない闘いも

大学新聞が例の事件に関する記事を次々と掲載したため、私はますます攻撃の対象となった。不安と憎悪が膨れ上がり、事態は悪化し続けた。

人との接触を避け、食事は全てテイクアウト、授業はオンライン──それが日常になり、結局、残りの学期は寮の部屋で孤立して過ごした。

私が自分の経験から理解したのは、多くの学生が保守派を憎んでいるわけではなく、若者の間で保守主義への理解が不足しているということ。自分の世界観に反するものは全て「個人攻撃」と見なす社会に生きている結果だ。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド7月運用成績、株高追い風 米貿易政策

ワールド

ミャンマー、米との関係再構築へ ワシントンのロビー

ワールド

米原油輸出、7月は4年ぶり低水準 需要減と代替品探

ワールド

自民党が両院議員総会、首相辞職要求が焦点 参院選の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 5
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 6
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 7
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 8
    経済制裁下でもロシア富豪はますます肥え太っていた…
  • 9
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 10
    【クイズ】1位は中国で圧倒的...世界で2番目に「超高…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中