最新記事
台湾海峡

中国の露骨な「台湾封鎖」訓練に米軍が駆逐艦で即応

China Forces on 'High Alert' After U.S. Warship Transits Taiwan Strait

2023年4月18日(火)20時04分
ジョン・フェン

南シナ海で任務中の駆逐艦ミリウス(4月10日) U.S. Navy/REUTERS

<台湾海峡と南シナ海で、中国とアメリカの緊張が高まっている >

中国軍は2023年4月17日、米海軍が台湾海峡で自らの存在感を「公然と誇張した」と抗議した。前日の16日に、米海軍が駆逐艦「ミリアス」を台湾海峡を航行させたことを受けてのことだ。緊張が漂う台湾海峡に米海軍が駆逐艦を派遣したのは、今年これで2度目だ。

【動画】台湾海峡を通過し「航行の自由」を示した米駆逐艦ミリアス

中国人民解放軍(PLA)東部戦区の報道官である陸軍大校の施毅(シー・イー)は談話を発表し、中国の部隊は「高い警戒態勢を常時維持し、国家の主権と安全、地域の平和と安定を死守する」と述べた。米海軍第7艦隊はその数時間後、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦のミリアスが4月16日に「台湾海峡を通常通り通過した」と発表した。

アメリカは、台湾は中国の一部で将来は武力を使ってでも統一を目指す、という中国の政策に公式には反対していない。だが台湾は民主主義で、国民は中国の統治をほとんど支持していない。従って、中台問題は威圧や武力を使わず平和裏に解決すべきだというのが米政府の主張だ。

露骨な「台湾封鎖」演習

駆逐艦ミリアスの航行直前の4月8日〜10日には、中国が台湾周辺で「台湾封鎖」をシミュレーションする露骨な軍事演習を行った。台湾総統の蔡英文が4月はじめに訪米し、下院議長ケビン・マッカーシーと会談したことへの対抗措置だ。中国は蔡を分離主義者とみなしており、米政治指導者の内政干渉を非難してきた。一方の台湾は、中国には台湾の外交に口を挟む権利はないと主張している。

【動画】中国が公開した台湾封鎖シミュレーションアニメと映像

中国人民解放軍報道官の施は、台湾海峡を航行する駆逐艦ミリアスの動きは中国軍が逐次追跡していたと述べた。台湾国防省が4月17日に発表したところによると、ミリアスは他の自軍船舶を伴わずに一隻で海峡を北方向に通過した。

米海軍の艦船は近年、頻繁に台湾海峡を通過している。同盟国の艦船が通過するケースもある。米海軍が台湾海峡を通過した回数は、2022年が9回、2021年が12回だった。2023年1月には、米海軍アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦チャンフーンが、今年初めて台湾海峡を通過。2月には、米軍の哨戒機P-8A(ポセイドン)が台湾海峡上空を飛行した。

中国軍と中国政府は2022年夏以降、中国政府による明確な許可なく、外国の船舶や航空機が台湾海峡を通過することの法的権利に疑義を呈してきた。米当局はこれを、中国政府が国際法を骨抜きにしようとする試みだと見ている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増

ビジネス

7月ISM製造業景気指数、5カ月連続50割れ 工場
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中