最新記事

日本社会

「国に帰れ!」 東南アジア出身の店員に怒鳴るおじさん、在日3世の私...移民国家ニッポンの現実

2023年1月6日(金)14時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
多文化共生

Vitalii Barida-iStock

<在日コリアン3世の私は、ニューカマー(新移民)とどう付き合うべきなのか?>

日本は「移民国家」にかじを切りつつあるといわれる。だが、日本の「移民」の歴史は決して浅くない。たとえば、古くからこの国に住む在日コリアン(韓国・朝鮮人)や華僑がいる。

今日では、東南アジア出身の「ニューカマー」の働きも欠かせない。彼らは、生活者としてますます日本に根づいてゆくだろう。

では、古くからの移民である在日コリアンは、どうやって日本社会の一員となってきたのか。「ニューカマー」とどう接するべきなのか。移民国家ニッポンを、どう形づくればよいのだろうか──。林晟一著『在日韓国人になる 移民国家ニッポン練習記』(CCCメディアハウス)より、〈プロローグ〉を全文公開する。

◇ ◇ ◇


「そうよ、わたしは馬車馬よ。いまでもそう(笑)」
「息子も元気な母ちゃんでよかったって言うもんね。これが病弱な母親だったら大変な思いをしただろうって」

編集者の都築響一が東京各地のスナック(おとなの居酒屋)の店主(ママ)たちに取材した名著、『天国は水割りの味がする』(廣済堂出版、2010年)にある一節。

ママはいささか酔いもまわっているのだろう、右のように自分史を語った。ページに挿さる一葉の写真には、お客さんたちとママ、たまに店を手伝うママの娘が写る。なめらかな語り口、ほのぼのした写真。

そのママこそ、私の母(オモニ)である。

けれど、息子である私が「元気な母ちゃんでよかった」としんみり伝えたことなど、ただの一度もない。そんな余裕ある家族史を歩ませてはくれなかった。

あわい照明と厚化粧に隠された素顔と実年齢のように、母は息子のことばをデフォルメしたのだった。スナックにおける真実は、まやかしとリアルの間(あわい)に宿る。なるほど、彼女はたしかに元気だった。かつては、深夜にスナックから帰れば、酔いにまかせ息子にからむこともあった。

頭をはたかれた息子は受けて立ち、しばしば取っ組み合いのプロレスにいたった。初老女性相手の手かげんはお約束だけれど、背は低いながらも相手は重量級。手かげん度合いをまちがえると、こちらが負傷した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

メルセデスが米にEV納入一時停止、新モデルを値下げ

ビジネス

英アーム、内製半導体開発へ投資拡大 7─9月利益見

ワールド

銅に8月1日から50%関税、トランプ氏署名 対象限

ビジネス

米マイクロソフト、4─6月売上高が予想上回る アジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中