最新記事

ロシア情勢

暗殺されかけたプーチンの盟友、極右思想家ドゥーギンとは何者か

Who is Alexander Dugin? 'Putin's Brain' in Distress After Daughter Killed

2022年8月22日(月)16時18分
ハレダ・ラーマン

殺された娘のダリア・ドゥーギンTsargrad.tv/ REUTERS

<超国家主義者でプーチンの対外政策に影響を与えたとされるアレクサンドル・ドゥーギンが乗るはずだった車が爆発、乗っていた娘が死亡した>

ロシアの超国家主義の思想家で、ウラジーミル・プーチン大統領に近いことで知られるアレクサンドル・ドゥーギンの娘が20日、自動車に仕掛けられた爆弾が爆発して死亡した。SNSには事件現場に駆けつけたドゥーギンとされる人物の動画が投稿されている。

死亡したのはドゥーギンの娘で、ジャーナリスト兼政治評論家のダリヤ・ドゥーギナ(29)。ロシア国営メディアによれば、事件はモスクワ郊外でダリヤがトヨタのランドクルーザー プラドに乗っていた時に起きたという。

捜査当局によれば、爆発の原因は車に仕掛けられた爆弾だったという。

一部のロシアメディアによれば、ダリヤは父ドゥーギンとともに文化フェスティバルに出席した帰りだった。車はドゥーギンのものだったが、直前になって他の車に乗ることにしたという。そのため今回の襲撃のそもそもの標的はドゥーギンだったのではないかとの憶測も流れている。

だがウクライナは関与を否定している。

ドゥーギンはしばしば「プーチンの頭脳」とか「プーチンのラスプーチン」とも呼ばれている人物(ラスプーチンは帝政ロシア末期に皇帝ニコライ2世夫妻に強い影響を及ぼしたことで知られる怪僧)だ。

ロシア国営タス通信によれば、娘のダリヤは1992年生まれ。モスクワ国立大学で哲学を学んだ。

「大ロシア帝国」構想を提唱した父

SNSのテレグラムには、現場に駆けつけたドゥーギンとされる動画が投稿された。ショックを受け、頭を抱えている様子が捉えられている。

投稿したのはロシア政府寄りのメディアで、犯罪現場の映像をしばしばリークすることでも知られる「バザ」だ。ドゥーギンが現場に真っ先に駆けつけたうちの1人だったとバザは伝えている(本誌はこの動画が本物かどうか確認できていない)。

動画ではサイレンが鳴る中、炎が燃え、車の残骸が散らばる路上で男性が立ち尽くしている。

ドゥーギンは長年、ロシア語圏やウクライナを含む国々を統一し、新たな大ロシア帝国を作るべきだと主張してきた。97年の著書『地政学の基礎----ロシアの地政学的未来』は、プーチンの拡張主義的な外交政策の土台になったと言われている。

彼の著作は、2014年のロシアによるクリミア併合や、今年2月に始まったウクライナ侵攻にも影響を与えたと見られている。

彼は長年にわたり、ロシアが国際舞台においてもっと攻撃的になるべきだと主張するとともに、ウクライナ侵攻を支持していた。

【動画】娘の爆殺現場に駆けつけて悲嘆に暮れるドゥーギン

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国とインドネシア、地域の平和と安定維持望む=王毅

ワールド

トルコ、中期経済プログラム強化へ 構造改革など優先

ワールド

イエレン氏、ウクライナ支援の決意強調 承認遅れで共

ビジネス

中国人民銀総裁と米FRB議長が会談、経済情勢など巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    【画像】【動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 3

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 4

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 8

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中