最新記事

核・ミサイル開発

北朝鮮、暗号資産交換所へのサイバー攻撃で57億円以上を獲得=安保理パネル

2022年2月7日(月)10時16分
北朝鮮によるものとされるミサイル実験の様子

国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会傘下の専門家パネルは、北朝鮮が過去1年間に核・弾道ミサイル開発を継続したほか、暗号資産(仮想通貨)交換所へのサイバー攻撃が北朝鮮の重要な収入源になっているとの報告をまとめた。写真は北朝鮮によるものとされるミサイル実験の様子、朝鮮中央通信(KCNA)提供(2022年 ロイター)

国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会傘下の専門家パネルは、北朝鮮が過去1年間に核・弾道ミサイル開発を継続したほか、暗号資産(仮想通貨)交換所へのサイバー攻撃が北朝鮮の重要な収入源になっているとの報告をまとめた。ロイターが5日、年次報告書の抜粋を閲覧した。

報告書は、4日に同制裁委に提出された。

専門家パネルは「核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射は報告されなかったが、北朝鮮は核分裂性物質を製造する能力を開発し続けた」と分析した。北朝鮮は国連安保理決議により核実験と弾道ミサイル発射を禁止されている。

報告書は「北朝鮮は核・弾道ミサイルのインフラの保守と開発を継続し、海外でサイバー手段や共同科学研究などを通じてこれら開発プログラム向けの物質や技術、ノウハウを求め続けた」と指摘した。

専門家パネルはまた、北朝鮮によるミサイル発射実験の「著しい加速」に言及した。

米英や日本など9カ国は4日、国連安保理の会合後に共同声明を発表し、北朝鮮による1月30日の中距離弾道ミサイル発射を非難。北朝鮮が1月に9回の弾道ミサイル発射を行ったとし、単月で過去最多だったと指摘した。

専門家パネルによると、北朝鮮はミサイル兵器について、迅速に配備する能力や海域を含む移動性、耐性が向上したことを実験で証明したという。

北朝鮮の国連代表部にコメントを求めたが、回答はない。

報告書はまた、北朝鮮にとって「暗号資産をはじめとする標的へのサイバー攻撃が重要な収入源であり続けている」と分析。金融機関や暗号資産関連会社および交換所を引き続きターゲットにしているとした。

ある加盟国によると、北朝鮮のハッカーは2020年から21年半ばまでの間に北米、欧州、アジアの少なくとも3つの暗号資産交換所から5000万ドル(約57億6千万円)以上を窃盗した。

また、ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが先月公表した報告書を引き合いに出し、北朝鮮が昨年、暗号資産プラットフォームに少なくとも7回攻撃を仕掛け、4億ドル近いデジタル資産を引き出したと指摘した。

北朝鮮の貿易については、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)に対応した厳格な国境閉鎖の結果、「ぜいたく品を含む違法貿易は大部分が停止した」と結論付けた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・『イカゲーム』の悪夢が世界をここまで虜にする理由
・地面に信号! 斜め上を行く韓国の「スマホゾンビ」対策が話題に
・韓国、保守に政権交代なら核兵器を配備する方針...米国は「関心なし」と専門家


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グレタさん、ロンドンで一時拘束 親パレスチナ支援デ

ビジネス

ワーナー買収戦、パラマウントの新提案は不十分と主要

ワールド

ベネズエラ国会、海賊行為・封鎖取り締まる新法承認 

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高の流れ引き継ぐ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中