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中国は「WTOの問題児」は嘘...はるかに身勝手なのがアメリカと示す「数字」

WTO CHANGES CHINA

2021年12月21日(火)17時45分
魏尚進(ウエイ・シャンチン、コロンビア大学経営大学院教授、元アジア開発銀行チーフエコノミスト)

中国はまた、WTOの紛争解決手続きで下された裁定におおむね従ってきた。だから、同じ問題で何度も提訴された例は少ない。具体的に言えば、提訴された47件のうち2件のみだ。対してアメリカは、同じ問題で15回も繰り返し提訴されている。

つまり、データで見る限り、中国がWTOのルール破りの常習犯だという主張は当たらない。むしろ一部の経済大国のほうがWTOのルールを無視している。

そうであれば、こう考えることが可能ではないか。中国政府に補助金による産業育成政策をやめさせ、知的財産の保護を強化させ、国有企業の優遇を廃止させるには、大国間の貿易戦争よりも多国間協議のほうが有効なのではないかと。

現に中国は多国間のTPP(環太平洋経済連携協定)に参加したい意向を正式に表明している。アメリカも多国間の協調を重視し、WTOの強化に努めるべきだ。それが信頼の回復につながる。

©Project Syndicate

SHANG-JIN WEI
コロンビア大学経営大学院教授(金融学・経済学)。アジア開発銀行(ADB)でチーフエコノミスト、世界銀行では汚職対策の政策・研究のアドバイザーなどを歴任した。

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