最新記事

地球

地球はこの20年で、薄暗い星になってきていた──太陽光の反射が低下

2021年10月11日(月)16時30分
松岡由希子

地球が反射する光は、2015年から著しく低下した...... studio023-iStock

<地球の地表面が太陽光を反射する割合が、1990年後半以降の20年で顕著に低下していることが明らかとなった>

実際に地表面へ到達する太陽光は、地球の「アルベド」(地表面が太陽光を反射する割合)に依存する。このほど、地球のアルベドが、1990年後半以降の20年で顕著に低下していることが明らかとなった。

地球で反射した太陽光が月を照らし、欠けた暗い部分がうっすらと見える現象を「地球照」という。地球照の明るさは地球のアルベドの影響を受けるため、地球照を観測することで間接的に地球のアルベドを調べることができる。米ニュージャージー工科大学が運営するカリフォルニア州のビッグベア太陽天文台(BBSO)では、1990年代半ばから地球照を観測してきた。

地球が反射する光は、2015年から著しく低下

ニュージャージー工科大学らの研究チームは、1998年から2017年末までの約1500夜にわたる地球照の観測データを用いて、夜別・月別・季節別・年別に地球のアルベドの変動を分析した。その研究成果はアメリカ地球物理学連合(AGU)の学術雑誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」に掲載されている。

この研究論文によると、地球が反射する光は、1998年時点と比べて1平方メートルあたり約0.5ワット減少した。これは地球のアルベドの0.5%減に相当し、地球は太陽からの入射光の約30%を反射していることになる。また、観測期間のうち、1998年から2014年までの17年間は、アルベドの年平均がほぼ一定であった一方、最後の3年にあたる2015年から2017年では著しく低下していた。

研究チームは、このようなアルベドの変動と太陽活動周期との関連を調べた。観測期間中、2002年と2014年に太陽極大期(太陽活動が極大になる時期)、2009年に極小期となったが、太陽の輝度の周期的な変化とアルベドの変動との相関は認められなかった。

気象衛星「スオミNPP」に搭載されたアメリカ航空宇宙局(NASA)の「雲及び地球放射エネルギー観測装置(CERES)」の観測データとも比較した。

海面水温の上昇に伴って光を反射する低層雲が減少

その結果、近年、光を反射する低層雲が東太平洋上で減少していることがわかった。アメリカ大陸の西海岸沖に位置するこの海域は、「太平洋十年規模振動(PDO)」と呼ばれる10年規模での周期的な気候変動により海面水温が上昇しているエリアでもある。研究チームは、「東太平洋での海面水温の上昇に伴って低層雲が減少し、これによって地球のアルベドが低下した」と結論している。

一連の研究結果は「より温暖になった地球が雲を増やし、アルベドを高めることで、温暖化を緩和させ、気候システムのバランスをとりやすくするのではないか」との説を覆すものだ。地球の大気や海で太陽エネルギーが増えれば、さらなる地球温暖化の要因となるおそれもある。

カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)の惑星科学者エドワード・シュバイターマン准教授は「実に憂慮すべきことだ」と警鐘を鳴らしている。

The Cause Of The Earth Is Losing Its Shine, Study Finds

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ネタニヤフ氏、イラン核問題巡りトランプ氏と協議へ 

ワールド

トランプ氏、グリーンランド特使にルイジアナ州知事を

ワールド

ロ、米のカリブ海での行動に懸念表明 ベネズエラ外相

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速か、米のタンカー拿捕受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中