最新記事

フィリピン

大統領立候補のパッキャオ、正式引退 フィリピンが誇る世界的プロボクサー

2021年9月28日(火)17時30分
大塚智彦

8月にラスベガスで行われたWBA世界ウェルター級王者ヨルデニス・ウガスとの対戦に臨んだパッキャオ。これが本当の引退試合になるのか? USA TODAY USPW - REUTERS

<72戦62勝という輝かしい記録をもつ男が、新たなステージに踏み出す決意をした──>

フィリピンのプロボクサーで世界的に名を知られるマニー・パッキャオ上院議員(42)がボクサーとして現役を引退することが正式に確認された。これはフィリピンの地元メディア「フィリピン・スター(ネット版)」が9月28日に伝えたもので、9月21日にネット上で公開されたインタビューの中でコメンテーターに対してパッキャオ氏が「私は引退した。ボクサーとしてのキャリアは終わった」と述べて現役引退を表明していたことを26日に本人が最終的に確認したとしている。

パッキャオ氏は2022年5月に実施される次期大統領選挙に最大与党から大統領候補として指名を受け、その指名を受ける形ですでに立候補しており、今後は政治活動に全力を傾注するものとみられ、国民的英雄としての全国的な人気と貧困層を中心とする根強い支持を背景に大統領当選への期待が高まっている。

21日の引退表明を自身が再確認

フィリピンの著名な芸能コメンテーターで女優、ブロガーでもあるトニー・ゴンザーガさんの番組「トニー・トーク」に出演したパッキャオ氏は9月21日、ユーチューブにアップされたインタビューでトニーさんから「もし大統領に当選したらボクサーとしてのキャリアはどうなるのか」と問われ、「ボクサーとしてのキャリアは終わった。家族はいつも引退を勧めてきたが情熱だけで長くボクシングをやってきた。だがもう終わりだ」と述べ、引退を表明した。

しかしその直後にパッキャオ氏のマネージメントを担当する興業会社の社長が米スポーツ専門チャンネル「ESPN」に対して「彼の引退表明は正式ではない。近いうちに自分自身でボクサーとしてのキャリアを今後どうするか結論をだすだろう」としてあくまで引退表明が正式なものではないことを強調していた。

これを受ける形でパッキャオ氏は9月26日に行われた地方政党の集会に参加し「もう(リングで)闘うことはない。まだそうしたい気持ちはあるがもう十分なほど長く闘ってきたのだから」と述べて21日の「引退宣言」を再確認した。

6階級制覇の国民的英雄

パッキャオ氏は南部ミンダナオ島の貧しい農家の出身で子供のころはタバコやパンを路上販売して家計を助けたが、経済的理由から中学を中退している。その後ボクシング界に入り、実力をめきめきと発揮して史上2人目という6階級制覇の世界王者として有名になった。

2010年に下院議員として当選し国政に参加。2016年からは上院議員として活躍する一方でボクサーとしても活動を続けていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、FRB当局者の利下げ発言を好感

ワールド

米国務長官、中国にイランへの働きかけ要請 ホルムズ

ワールド

米下院議長、対イラン軍事制限法案の採決拒否 米軍基

ワールド

米・イラン対立激化懸念高まる、トランプ氏支持率低下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 8
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    【クイズ】次のうち、中国の資金援助を受けていない…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中