最新記事

アフガニスタン

独立の祝砲に沸くタリバンに中国はどう向き合うのか?

2021年9月2日(木)10時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
タリバン

タリバンが実権掌握 米軍撤退完了(8月31日) REUTERS

米軍が最終撤退した瞬間、タリバンは独立の雄たけびを上げて祝砲を鳴らし続けた。中国の第一報はこの場面と、国連安保理対タリバン決議に対する中露の棄権だった。中国は今後どのようにタリバンと向き合うのか?

アフガンの夜空に轟く祝砲を報道した中国

8月31日未明、米軍を載せた最後の一機がカブール空港を飛び立った瞬間、カブール空港はタリバンの管轄下に入り、タリバン軍は勝利の雄たけびを上げた。

曳光弾(えいこうだん)(発光体を内蔵した特殊な弾丸)や機関銃などによる祝砲が夜空に向かって打ち上げられ、それは2時間ほど続いたという。

「20年間に及ぶアメリカの侵略軍から解放され、独立した喜びに沸いています!」と中国の中央テレビ局CCTVは、興奮気味に伝えていた。

中国がタリバンの勝利を我がことのような姿勢で報道するのは、言うまでもないが「侵略軍」と中国が位置付ける軍隊が米軍だからだ。

中国ではこのたびのアフガン戦争(2001年~2021年)だけでなく、朝鮮戦争(1950年~1953年)から始まって、ベトナム戦争(1955年~1975年)、イラク戦争(2003年~2011年)など、「アメリカの行くところ戦争あり」という報道の仕方をしており「世界の平和を乱しているのは誰か?」ということを言いたいからで、「国際秩序を乱しているのは中国だ」というアメリカの批判に対抗したいものと見られる。同時にウイグル問題や香港問題などに関して「他国に干渉するな」ということを主張したいからでもあろう。

これらに関しては毎日のように報道しているので、この日の報道は、その姿勢の一環だ。

中国が国連安保理での対タリバン決議案を棄権した理由

今般の米軍完全撤退に関して、タリバンの祝砲とともに中国の報道が重視したのは8月30日に国連安保理で開催された緊急会議に関してだった。会議ではタリバンに対し、アフガン人と全外国人の「安全で秩序あるアフガン出国」を認めることなどをタリバンに約束させようとする米英仏提案の決議案を採択した。15理事国の内13ヵ国が賛成したが、中国とロシアは棄権した。

中国とロシアは、それぞれ棄権理由を説明したが、CCTVでは中国の国連大使である耿爽の主張を報道した。詳細は「中華人民共和国常駐国連代表団」のウェブサイトにある。その概略を以下に示す

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国習主席、APEC首脳会議で多国間貿易体制の保護

ビジネス

9月住宅着工、前年比7.3%減 6カ月連続マイナス

ワールド

高市首相と中国の習氏が初会談、「戦略的互恵関係」の

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中