最新記事

東京五輪

無観客開催「選手の家族ぐらいは距離を取って観戦できたはず」と海外から不満の声

Simone Biles' Mom Says Families Could Social Distance in Venues for Events

2021年7月16日(金)19時02分
レベッカ・クラッパー
シモーネ・バイルズ

バイルズの家族にとっては娘のそばにいられなかった大会になる Grace Hollars-USA TODAY Sports

<リオデジャネイロ五輪の女子体操金メダリスト、シモーネ・バイルズの母親は「ソーシャル・ディスタンスを取って観戦も可能なのに」と主張。時差を考えてわざわざアメリカからテレビ観戦するという南アフリカ選手の両親も>

7月23日に開幕する東京オリンピックは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ほぼ無観客での開催が決まったが、これについて多くのアスリートやその家族から不満の声があがっている。アメリカの女子体操代表でリオデジャネイロ五輪の金メダリスト、シモーネ・バイルズの母親、ネリー・バイルズもその一人だ。競技場でソーシャル・ディスタンスを確保しつつ観戦することはできたはずだ、と彼女は指摘する。

ネリーと夫はテキサス州で体操のトレーニング・センターを運営しており、新型コロナ関連の感染対策については熟知している。1万2000席ある有明体操競技場ならば、アスリートの家族が距離をとりつつ観戦するのに十分なスペースがあると彼女は考えている。

「ソーシャル・ディスタンスを守って、ほかの家族と会わないようにすることは可能だ。東京五輪の競技場には、それだけの広さがある」と彼女は言う。「運営側がそれを調整できないなんて、理解に苦しむ。もちろんこれは私のわがままにすぎないが、東京オリンピックは私の中で、自分がその場にいられなかった大会としてずっと記憶に残ることになるだろう」

一部のアスリートの家族は、自宅でテレビ観戦パーティーを開いて遠くから応援することにしているが、ネリーはそうしたパーティーに参加するつもりはないと言う。

「ひとりで自宅で観戦する」と彼女は言った。「緊張するから、ほかの人と一緒に観ることはできない」

以下にAP通信の報道を引用する。

メダルは「自分で首にかける」

2004年のアテネ五輪から2016年のリオデジャネイロ五輪までで史上最多の28個のメダル(うち23個は金)を取り「水の怪物」と言われたアメリカのマイケル・フェルプスは、19歳で出場したアテネ五輪で初めての金メダルを取ったとき、プール脇の金網越しに母親の手を握った。ひとりで自分を育ててくれた母親とその瞬間を分かち合いたかったのだ。

東京五輪では、アスリートと家族のこうした瞬間は見られない。

大半の競技会場は観客(国内の観客も海外からの観客も)を入れない決定を下しており、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ措置として、表彰式ではアスリートが自分で自分の首にメダルをかける。表彰台での握手やハグもなしだ。

「私は観客の反応からエネルギーを貰っている」と、リオデジャネイロ五輪の金メダリスト、シモーネ・バイルズは言う。「だから無観客だとどうなるのか、少し心配だ」

大舞台に立つアスリートは、競技中に見覚えのある顔を見つけることで元気づけられることがある。リオデジャネイロ五輪男子1500メートルで金メダルを獲得したマシュー・セントロウィッツもそうだ。

「大勢の観客の中にいる家族の顔を見つけ、彼らの声を聞いたことで、少し安心できた。気持ちを落ち着かせるには必要なことだった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ステーブルコイン、決済手段となるには当局の監督必要

ワールド

ガザ支援船団、イスラエル封鎖海域付近で船籍不明船が

ビジネス

ECB、資本バッファー削減提案へ 小規模行向け規制

ビジネス

アングル:自民総裁選、調和重視でも日本株動意の可能
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 10
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中