最新記事

気候変動

京都1200年の「花見」の記録は、気候変動を示す世界的に貴重な記録だった......過去最も早く満開に

2021年4月1日(木)17時30分
松岡由希子

京都のさくらが過去1200年で最も早く満開となった (写真は、2017年4月7日) REUTERS/Jorge Silva

<京都の1200年にわたっての「花見」、「観桜会」の記録は、気候変動の生物学的影響を示す世界的に貴重な記録であることが示された...... >

京都地方気象台は、2021年3月26日、さくらの満開を発表した。平年より10日早く、過去1200年で最も早い。

京都では、遷都以来、「花見」、「観桜会」、「さくらの満開」など、さくらにまつわる出来事が日記や年代記に数多く記されてきた。大阪府立大学生態気象学研究グループ青野靖之准教授の研究チームは、これらの日記や年代記などを対象に史料調査を行い、812年以降のさくらの満開日をデータでまとめている。これによると、これまでに最も早かった満開日は、1236年、1409年、1612年に記録された3月27日であった。

京都のさくらの記録は、1200年にわたって遡ることができる点で、過去の気候の再構築に役立つとともに、気候変動の生物学的影響を示す代替的な指標のひとつとされている。

満開日のグラフは、「ホッケースティックのようだ」

米ボストン大学らの研究チームは、2009年4月に発表した研究論文で「9世紀まで遡る京都での花見の記録は、過去の気候を再構築し、地球温暖化や都市化に伴う気温上昇を示す、季節学で世界最長の記録だろう」と述べている。

ウィスコンシン大学ミルウォーキー校らの研究チームが2006年1月に発表した研究論文では、「地球温暖化に伴って、北半球の春が早く到来している」ことが示されている。

京都でのさくらの満開日をグラフで表わすと、約1000年にわたって比較的安定していた満開日が1830年代以降、どんどん早くなっていることがわかる。ワシントン大学の地球化学者エリック・スタイグ教授は、このグラフを「ホッケースティックのようだ」と表現する。

C8cIOBMVYAA3G7r.jpg

(資料:大阪府立大学)

「地球温暖化が過去数千年で例を見ないものであることを示す」

ペンシルベニア州立大学の気候学者マイケル・マン教授は、米紙ワシントン・ポストで「さくらの記録は、我々が現在直面している人為的な地球温暖化が過去数千年で例を見ないものであることを示している」と警鐘を鳴らしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中