最新記事

アメリカ政治

米議会占拠は「アメリカの春」? アラブ諸国で広がる冷ややかな視線

'American Spring' Trends on Arabic Twitter as D.C. Compared to 2011 Revolts

2021年1月8日(金)15時20分
トム・バチェラー

アメリカは「アラブの春」で中東各国の民主化を推進したが(写真は2011年にムバラク大統領の打倒を祝うエジプトの民衆) Mohamed Abd El-Ghany-REUTERS

<10年前の「アラブの春」で民主化を呼びかけたアメリカ中枢で起きた暴挙に、アラブ諸国では「善意が自分に戻ってきた」という皮肉な見方も>

今週6日、米連邦議会議事堂をトランプ支持者のデモ隊が一時占拠した事件について、アラブ諸国では「#AmericaSpring」というハッシュタグを付けたツイッター投稿が拡散している。2011年頃に中東各国で民主化運動が広がり、リビアやチュニジアなどでは数十年続いた独裁政権が倒された「アラブの春」と今回の事件を対比している。

トランプ支持者のデモ隊は6日、大統領選の結果を確定する上下両院の合同会議が行われていた連邦議会議事堂に乱入し、議員執務室や議場にも侵入した。これを警察部隊が催涙ガスや銃武装で排除しようとしたため、議事堂内外の各所で激しい衝突が起こり、議会警察に撃たれた女性1人など合わせて4人が死亡した。

(デモ隊に圧倒される議会警察)

アラブ諸国で拡散されたツイッターは今回の事件を、チュニジアからシリアまで反政府、民主化運動が広がり、一部の国で民衆が民主化や社会的自由を勝ち取った「アラブの春」と対比した。

サウジアラビアとエジプトでは、多くのユーザーがアラビア語で「#AmericanSpring」のハッシュタグを付けてツイートを発信。両国のトレンドランキングで上位に入った。

アメリカが推進した「創造的カオス」

議事堂にデモ隊がなだれ込む様子を捉えた大量の画像や映像がソーシャルメディアで拡散されるなか、あるユーザーは「これが今彼ら(アメリカ)に起きていることだ」とコメントした。

別のユーザーは「アラブ諸国の破壊を求めた『創造的カオス』に、とうとうアメリカ自身が苦しめられることとなった。アメリカの善意が一周回ってアメリカに戻った!」と書いた。

(#AmericanSpringのハッシュタグを付けたツイート投稿)


10年前に中東の「アラブの春」を報じたジャーナリストも、「#AmeicanSpring」のハッシュタグを付けて今回の事件についてコメントした。

ある投稿では「『アラブの春』を取材した特派員として、我々すべてに今回の事件を『アメリカの春』と呼ぶ責任がある」と書かれていた。

別の投稿は「今こそイラクと有志連合が、アメリカを解放してこの地域に平和と安定をもたらすときだ」と、2003年の米軍イラク侵攻になぞらえて皮肉った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中