最新記事

韓国

韓国・文政権、不動産政策とコロナ対策の失敗で、政権末期の死に体に?

2020年12月28日(月)14時35分
佐々木和義

文在寅政権の不支持率は就任以来最高の59.7%に...... Ryan Kelly-REUTERS

<韓国・文在寅政権は、相次ぐ不動産政策の失敗や、与党政治家の相次ぐ不祥事、新型コロナ対策の失敗で、支持率が急落している......>

文在寅大統領の支持率が低迷している。不動産価格の高騰が続いて、文大統領を支持してきた20代から40代がマイホームを購入する夢が遠のき、文政権離れが加速しているのだ。

韓国政府は不動産高騰の原因は住宅不足にあるとして、供給を増やす対策を打ち出すが、非現実な施策に批判の声が上がっている。

不動産高騰の背景に、韓国特有の賃貸制度「チョンセ(伝貰)」

韓国の不動産が高騰している背景に、韓国特有の賃貸制度「チョンセ(伝貰)」がある。チョンセは、賃借人が入居時に売買価格の50%から80%に相当するチョンセ金を賃貸人に払い込み、月々の家賃がない賃貸制度で、チョンセ金は敷金に相当し、退却時に全額返還される。

朝鮮戦後の1950年代後半から多くの国民が首都ソウルに流入し、住宅が不足した。1960年、韓国の預金金利は17.4%で、90年代には10%前後まで下がったが、賃貸人はチョンセ金を銀行に預けると家賃収入と同等以上の収益を得ることができ、賃借人は家賃に相当する額を貯蓄に回して住宅購入資金を貯めることができた。

資産家はチョンセの預かり金とマンションを担保に銀行から借入れ、2軒目、3軒目の賃貸用マンションを購入した。

2000年代に入って金利が下がると、利子収入が期待できなくなった資産家は値上りによるキャピタルゲインを求めて不動産投機をはじめた。

韓国の住宅開発は、数千戸から数万戸規模で行われる例が少なくない。自治体が土地を確保し、入札で選ばれた民間業者が開発する。大規模造成地は不便な場所が多く、新築時の分譲価格は低く設定される。入居がはじまると商店やスーパーなどの生活便利施設やバス路線などの公共交通が整備されて利便性が向上し、価格が値上がりする。地下鉄が開通して新築時の5倍から10倍に値上がりしたマンションもある。

韓国のマンションは頭金を払い込んで契約し、残金を払って引き渡しを受ける。少ない自己資金で購入契約を締結し、入居者を募集して預かったチョンセ金で残金を支払い、退去者への返還金は新たな入居者から預かるチョンセ金を充当する"自転車操業"を繰り返しながら値上げを待つ投機家が現れた。

2009年のリーマンショックで金利が2%に下落すると、"自転車操業"家主の破産が相次ぎ、チョンセ金が銀行の担保に組み込まれていない不動産が高騰した。

また、韓国内の投資適格案件が不足し、日本をはじめとする海外投資がはじまったが、2019年のNO JAPAN運動で日本投資が難しくなり、国内不動産への投資が加速した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中