最新記事

日本経済

「望ましい次期首相は菅氏が過半数、求める政策は財政再建」日本企業アンケート

2020年9月11日(金)11時50分

ロイター企業調査によると、辞任を表明した安倍晋三首相の後任に望ましい人物として、菅義偉官房長官を推す声が過半数を超えた。写真は9日、都内の自民党本部で討論会に臨む菅氏。代表撮影(2020年 ロイター)

9月ロイター企業調査によると、辞任を表明した安倍晋三首相の後任に望ましい人物として、菅義偉官房長官を推す声が過半数を超えた。昨年12月調査でトップだった石破茂・元自民幹事長は2割にとどまり、2位となった。河野太郎防衛相が3位、岸田文雄政調会長はその後塵を拝し、昨年末調査と比べ大きく後退した。

また、ポスト安倍政権に望む政策としては「財政再建」が3分の1を占め、最も多かった。新型コロナウイルス対策で膨張した財政への懸念が大きくなっている。このほか、海外との経済連携強化が2割、候補者が力を入れるデジタル化の支援は1割強にとどまった。

この調査は8月31日から9月9日に実施。485社に送付し、回答者数はおよそ248社程度。

次期首相は菅氏がトップ、石破氏には変革求める

  

7年8カ月の長期に及んだ安倍政権。経済政策「アベノミクス」によって「恩恵の方が大きかった企業」は85%を占め、株高・円安など、企業にはフォローの政策と受け止められた。

安倍首相の突然の辞意表明を受け、ポスト安倍レースの火ぶたが切って落とされたが、企業からは「安倍路線を継承しつつ、手堅い政権運営が期待できる」(機械)、「安倍政権・政策の踏襲」(電機)として、菅氏がふさわしいとする回答が56%に上った。

2021年9月には自民党総裁の任期が訪れることもあり、「あくまでも、つなぎだから菅さん」(サービス)、「いったんは現路線を踏襲するとのことで、政権交代の混乱を最小限にできると考えられるため 」(精密機器)など、リリーフ的な役割と位置付ける回答もあった。

昨年12月調査でトップだった石破氏は、前回調査よりやや伸びたものの、20%で2位。「従来とは違う政策が期待できる」(化学)、「アベノミクスの修正」(鉄鋼)と、菅氏とは対照的に、変革を求める回答が目立っている。

岸田氏が望ましいとの回答は前回より減り、2%にとどまった。河野氏は前回とほぼ変わらず15%で3位に入っている。

求める政策は「財政再建」、DX推進支援は1割強

16日の首班指名選挙を経て、次期政権が発足する。新政権に求める政策は「財政再建」との回答が33%で最も多かった。企業の間でも財政に対する危機感は強く、「議員の給料等を減らしてでも、国の赤字を減らすべき」(非鉄金属)、「コロナで疲弊した国の財政と経済の回復に期待したい」(機械)との声が出ている。

「海外との連携」は20%を占めた。米中貿易摩擦や韓国との関係悪化は企業経営にも直結するだけに「米中貿易戦争の影響回避」(鉄鋼)や「中国、韓国との関係改善と輸出活性化」(金属)を求める回答があった。

新型コロナへの対応では、日本のデジタル化の遅れが露見した。自民党総裁選挙で他を圧倒しそうな勢いの菅氏は「デジタル庁」創設を掲げているが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進支援」は12%にとどまった。このほか「日本の発展につながる長期的な政策」(精密機械)として、少子化対策を望む回答が9%あった。

(清水律子 グラフィクス作成:照井裕子 編集:山川薫)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・風雲急を告げるポスト安倍レース 後継候補の顔ぶれは?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・「アベノミクスは買い」だったのか その功罪を識者はこうみる
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中