最新記事

コロナ禍の社会

コロナ対策で移動手段は公共交通機関から自転車へシフト

2020年5月12日(火)17時45分
松丸さとみ

パリでもロックダウン解除に向けて自転車が人気 REUTERS/Charles Platiau

<ロンドンでは、公共交通機関の輸送力はコロナ危機前と比べわずか20%になる見込みで、自転車の利用者は10倍になると予想している......>

運動不足解消&公共交通機関避け、自転車が人気に

英国のボリス・ジョンソン首相は10日(現地時間)、外出禁止令をさらに6月1日まで延長し、その後は条件が満たされれば段階的に緩和していくと発表した。国民に向けたこの演説の中で同首相は、建設業や製造業など、自宅での勤務が難しい人の場合は出勤を奨励するとした。ただしその際は、「可能であれば公共交通機関は使わず、車や徒歩、自転車で移動してほしい」と訴えた。

英政府はこれまでも、新型コロナウイルス感染症拡大の予防策として、公共交通機関はできれば使わないよう国民に呼びかけていた。こうしたこともあり、移動手段として、自転車が注目を集めている。

英国では、3月23日に外出禁止令が発表されてロックダウン状態になって以降、「1種類のエクササイズ」での外出は許可されており、これには自転車が含まれている。そのため、ロックダウン中の運動不足解消に、自転車を始める人が増えているという。

グラント・シャップス運輸相は9日に首相官邸で、国内の道路インフラを歩行者と自転車用に合ったものに整備しなおすために20億ポンド(約2657億円)を投じる計画を発表したが、その際にも、生活必需品の調達やエクササイズなどで、ロックダウン中は自転車人口が70%増加した地域もあったと述べた。

英公共放送BBCも、自転車の売り上げが全国的に伸びている他、物置にしまってあった自転車を引っ張り出してきた人からの修理の依頼も増えていると報じた。

「自転車通勤スキーム」の利用が急増

英国ではこれまでも、自転車通勤を促す政策として、「自転車通勤スキーム」が実施され、活用されてきた。会社員が勤務先を通じて自転車やアクセサリーを注文すると、代金は給料から毎月天引きされていき、その分は所得税が控除される。最終的には25%以上割安で自転車が手に入るという仕組みだ。

この自転車通勤スキームは当初、公共交通機関の混雑緩和や自動車による温室効果ガス排出の削減を目指すものだったが、コロナ対策の通勤手段としても活用されているようだ。

BBCによると現在、医療機関で働く人たち(外出禁止令中も出勤する人たち)から「自転車通勤スキーム」の申し込みが殺到しており、自転車の注文件数は200%増になっているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=

ビジネス

ビットコイン一時9万ドル割れ、リスク志向後退 機関

ビジネス

欧州の銀行、前例のないリスクに備えを ECB警告

ビジネス

ブラジル、仮想通貨の国際決済に課税検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 3
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中