最新記事

感染症対策

中国「新型コロナウイルス対策」積極輸出 新たな外交カードに

2020年4月21日(火)14時41分

セルビアの首都・ベオグラードの空港で今年3月、中国の医療専門家6人がレッドカーペットに降り立った。写真は、ベオグラード市内に掲げられた「ありがとう、習兄弟」と書かれた看板。1日撮影(2020年 ロイター/Djordje Kojadinovic)

セルビアの首都・ベオグラードの空港で今年3月、中国の医療専門家6人がレッドカーペットに降り立った。閣僚らとともに6人を迎えたブチッチ大統領は、握手の代わりに腕をぶつけ合う、新型コロナウイルスに配慮したあいさつを済ませると、セルビア国旗に続いて中国国旗にキスをした。

中国は、欧州で最も親密なセルビアのほか、複数の友好国に対し、新型コロナとの闘い方を助言するための人員を派遣している。

米国その他の国々から、感染拡大への初期対応に失敗したと批判を浴びている中国にとって、こうした支援は新型コロナとの闘いにおける世界的指導力をアピールする手段の1つだ。

西側諸国はかねて、巨大経済圏構想「一帯一路」などを通じた中国の世界的影響力の拡大を警戒しており、中国側は善意の姿勢を示すことでそうした懸念を鎮めようと努めてきた。

「中国が新型コロナを利用し、国益にかなうと見なす活動を押し進めるのは間違いない」と語るのは、カナダの元外交官でカナダ・アルバータ大学中国研究所のディレクター、ゴードン・ホールデン氏だ。

「そうした活動には、自国の統治モデルを推すことも含まれる。今回の場合は、疫学的な方法論だ」と指摘する。

中国外務省はコメント要請に回答していないが、同省報道官は9日の記者会見で、医療チーム派遣の目的は統治モデルの輸出ではなく、新型コロナ対策の経験を共有することだと述べた。

中国はセルビアの他、カンボジア、イラン、イラク、ラオス、パキスタン、ベネズエラ、イタリアの各国に医療チームを派遣した。前週はフィリピンに医療チームが到着している。

中国国際発展協力署によると、同国はこの他、米国など対立関係にある国を含めて約90カ国に物資の寄付や販売を行い、ノウハウを共有するため、諸外国や国際機関とのビデオ会議も数多く開いたとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中