最新記事

事件

ゴーン被告、日産側による監視の解除直後に海外逃亡 高野弁護士「裏切りだが全否定できない」

2020年1月4日(土)22時00分

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(会社法違反の罪などで起訴)が保釈中に海外へ逃亡した事件で、同被告が自身の行動を監視していた警備業者に対して刑事告訴すると警告し、監視が解除された直後に日本を出国していたことがわかった。警備業者は日産が手配していた。複数の関係筋が明らかにした。2019年3月撮影(ロイター 2020/Issei Kato)

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(会社法違反の罪などで起訴)が保釈中に海外へ逃亡した事件で、同被告が自身の行動を監視していた警備業者に対して刑事告訴すると警告し、監視が解除された直後に日本を出国していたことが4日、分かった。警備業者は日産が手配していた。複数の関係筋が明らかにした。

関係者らによると、日産によるゴーン被告に対する監視は、保釈中に同被告が外で事件関係者と接触して口裏を合わせたり証拠を隠滅したりするのを防ぐためだった。東京地裁が決めた保釈条件がゴーン被告の外出先での行動すべてを監視できるものではないとして、日産側は警戒していたもようだ。同社広報はコメントを控えた。

ゴーン被告の弁護団の1人である弘中惇一郎弁護士は昨年11月の記者会見で、同被告が何者かに見張られたり、バイクでつきまとわれる状況にあると明かし、精神的なハラスメントで人権侵害にあたるとして対策を検討していると説明していた。

関係筋の話では、その後、警備業者はゴーン被告から刑事告訴すると警告されたことを受け、昨年12月29日にいったん監視を中止した。NHKによると、保釈中の指定住居に設置されたカメラには、ゴーン被告が同日の昼ごろに1人で外出する様子が映っていた。同被告は同日夜、関西空港からプライベートジェット機でレバノンに向かって飛び立ったとみられる。

ゴーン被告の弁護士、「裏切り」だが「全否定できない」

弁護団の1人である高野隆弁護士は4日、自身のブログを更新し、ゴーン被告が保釈条件を無視して日本を密出国したことに対する心境を記した。

ブログのタイトルは「彼が見たもの」。弁護団としてではなく、個人的な意見とした上で「ニュースで彼がレバノンに向けて密出国したことを知った。まず激しい怒りの感情がこみ上げた。裏切られたという思いである」と吐露した。

その上で「実際のところ、私の中ではまだ何一つ整理できていない。が、一つだけ言えるのは、彼がこの1年あまりの間に見てきた日本の司法とそれを取り巻く環境を考えると、この密出国を『暴挙』『裏切り』『犯罪』と言って全否定することはできない」などと続けた。

最後は「確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない」と締めくくった。

(白木真紀 取材協力:白水徳彦)

[東京 4日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価は再び安定、現在のインフレ率は需給反映せず=F

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 9
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中