最新記事

社会

「タトゥーあり」でも就職OK、世の中は変わった

Tattoos and Jobs

2018年9月3日(月)17時00分
アビー・インテランテ

見えるところにタトゥーがあっても就職で不利にならない時代が来た JOHN FEDELE-BLEND IMAGES/GETTY IMAGES

<若い世代では既に一般化し偏見も薄れつつある>

若い頃、親からこう言い聞かせられた人も少なくないだろう。入れ墨なんて入れたらまともな職には就けないよ、と。10年のピュー・リサーチセンターの調査ではタトゥーを入れた成人のうち、外から見えない位置にしていると答えた人が72%。かなりの割合に上ったのは、こうした「常識」のせいかもしれない。

だがこのほど学術誌ヒューマン・リレーションズで発表された論文によれば、世の中は変わりつつあるようだ。

マイアミ大学とウェスタンオーストラリア大学の研究チームは、全米50州の2000人以上を対象にタトゥーの有無と職に就いているかどうかの関係を調査。その結果、外から見えるところにタトゥーを入れていても雇用や賃金、収入に影響はないことが判明した。タトゥーの有無による収入格差はほとんどなかったし、タトゥーがあるほうが雇用に有利な例まであったという。ピューの調査でも、アメリカのミレニアル世代(80〜90年代生まれの人々)ではタトゥーを入れている人が40%に達していた。

「特に、見えるところに彫ったタトゥーに対する悪いイメージは弱まっているのかもしれない。自然で普通な自己表現の形として捉えている若い世代の間ではとりわけそうだ」と、論文の主著者であるマイアミ大学のマイケル・フレンチ教授は述べている。「タトゥーは社会に広がっており、採用担当の管理職や上司が差別的な考えを持っていると、最も適任な人材を獲得できないのではないか」

要するに、タトゥーがある人材の採用を嫌がれば、結果として適材適所とはいかなくなる可能性があるということだ。

病院のように、従業員には全てのタトゥーを隠すよう求めている職場もある。だが近年は米陸軍でさえ、規制を緩和している。現在では不快感を招くものでなければ、また頭や顔、首、手や手首以外に入れるのであれば許される。

NBCニュースとウォール・ストリート・ジャーナル紙が99年に行った世論調査では、タトゥーを入れた家族がいると答えたのは21%にすぎなかった。だが14年には、その割合は40%に増えていた。タトゥーが一般化してきたことで差別も消えつつあるということだろう。

[2018年9月 4日号掲載]

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港GDP、第3四半期は前年比+3.8% 予想上回

ワールド

北朝鮮の金永南・前最高人民会議常任委員長が死去、9

ワールド

高市首相、来夏に成長戦略策定へ 「危機管理投資」が

ワールド

マクロスコープ:国会本格論戦へ、立憲は消費減税で攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中