最新記事

不正疑惑

ナジブ前首相が汚職調査機関に出頭 出国禁止、家宅捜索と狭まる包囲網

2018年5月22日(火)21時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

5月22日、マレーシアのナジブ前首相は、政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)」を巡る汚職疑惑に関連した聴取を受けるため、クアラルンプールにある汚職防止委員会(MACC)の本部に出頭した。(2018年 ロイター/Lai Seng Sin)

<史上初の政権交代を果たしたマレーシア。総選挙で敗北したナジブ元首相を待っていたのは、汚職疑惑に対する捜査だった>

マレーシアの「汚職防止委員会(MACC)」は5月22日、ナジブ・ラザク前首相に出頭を求め、約5時間に渡って首相在任中の不正資金流用問題で事情聴取を行った。

同月9日の総選挙で敗北し、同国史上初の政権交代の責任を取る形で与党連合や政党「統一マレー国民組織(UMNO)」の要職を辞任、マハティール新首相により出国禁止措置をとられたナジブ前首相は、警察による家宅捜索に続いてMACCが事情聴取に乗り出したことで不正疑惑問題で次第に追い詰められつつあり、身柄拘束も近いとみられている。

9日の総選挙結果で10日未明に政権交代が現実のものになると、ナジブ元首相側、マハティール新首相側の動きは早かった。

政府系ファンド「ワン・マレーシア・デベロップメント・バンク(1MDB)」が巨額の負債を抱えるなか、ナジブ前首相の個人口座に約7億ドル(約760億円)が振り込まれるという疑惑が浮上していた。しかしマレーシアのMACCや裁判所は「疑惑を否定」する判断をこれまでは示していた。

これに納得しない野党勢力に与党を離党したマハティール元首相が合流、「ナジブ政権の汚職金権体質脱却」と「変化」を掲げて野党連合をまとめ、総選挙で多くの国民の支持と期待を受けて政権交代を実現させた。

出国禁止措置、家宅捜索、押収品多数

ナジブ前首相はロスマ・マンソール夫人とともに総選挙後の12日に「しばらく海外で休養する」と表明。インドネシア行きの航空機の搭乗名簿に名前が記載されているとの情報が流れるとマハティール新首相が入国管理局に即座に連絡、夫妻を出国禁止にした。

自宅周辺に警察車両が張り付く中、5月16日夜から18日にかけて一戸建ての自宅、事務所、クアラルンプール中心部の高級コンドミニウムの別宅などで警察による家宅捜索が一斉に実施された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中