最新記事

欧州

イタリア、IMF元高官を暫定首相に指名 議会運営難しく秋には再選挙か

2018年5月29日(火)07時45分

5月28日、イタリアのマッタレッラ大統領はカルロ・コッタレッリIMF元高官(写真)を暫定首相に指名し、来年初旬までに再選挙を実施する計画を進めるよう命じた。写真は28日、ローマで撮影(2018年 ロイター/Tony Gentile)

イタリアのマッタレッラ大統領は28日、国際通貨基金(IMF)元高官のカルロ・コッタレッリ氏を暫定首相に指名し、2019年予算案の通過と来年初旬までに再選挙を実施する計画を進めるよう命じた。

イタリアでは3月の総選挙以降、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右「同盟」が連立政権樹立を目指していたが、次期首相に指名されていたジュセッペ・コンテ氏が前日、財務相の人選を巡ってマッタレッラ大統領と合意できずに組閣を断念した。

暫定首相の指名を受けたコッタレッリ氏は記者団に対し、再選挙は今秋もしくは来年初旬をめどに実施する見通しを示した。その上で、ここ数営業日で金融市場の緊張が高まったことに言及しつつも、「イタリア経済は引き続き拡大し、公会計も抑制されている。暫定政権下において、公会計の慎重な管理を進めていくことを確約する」とし、投資家の懸念払拭(ふっしょく)に努めた。

再選挙がイタリアのユーロ離脱の是非を問う事実上の国民投票になり得るとして、世界の金融市場では懸念が強まっており、ユーロは対ドルで半年ぶり安値を更新したほか、イタリア債利回りも上昇している。

コッタレッリ氏は数時間以内に組閣に着手し、議会の過半数支持を得る必要があるが、「フォルツァ・イタリア」を率いるベルルスコーニ元首相はすでにコッタレッリ氏を支持しない姿勢を鮮明にしていることもあり、困難が予想される。

また、議会の信任なしに年内の2019年予算案通過は難しいとみられ、それができない場合、再選挙は早ければ9月にも実施される可能性がある。

コッタレッリ氏が暫定首相の指名を受け入れたことを受け、同盟のサルビーニ書記長は声明で「民主主義に反する。一般投票の結果を尊重していない」と述べ、イタリアが金融市場の反応の奴隷にされていると批判した。

関係筋によると、五つ星運動は再選挙が実施されれば、同盟と組む可能性を検討している。

[ミラノ 28日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中