最新記事

航空機

マレーシア航空めぐる2つのミステリー 明暗分かれる原因判明と捜索打ち切り

2018年5月26日(土)21時02分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2014年7月ウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空MH17便の残骸。MAXIM ZMEYEV-REUTERS

<2014年に墜落したマレーシア航空の2つの旅客機。航空史上に残る謎はさまざまな理由によって解明されないままになりそうだ──>

マハティール首相が政権を担う新生マレーシアの運輸当局が5月23日、2014年1月に発生したマレーシア航空370便(MH370)の消息不明事件に関して、これまで継続されていた捜索活動を5月29日に打ち切ることを明らかにした。

一方で同年の2014年7月にウクライナ東部でこれも同じマレーシア航空の17便(MH17)が地上からのミサイル攻撃で撃墜された事件では、原因究明を続けていた5カ国の合同調査チームが5月24日に「ロシア軍が保有する地対空ミサイルによって撃墜された」と断定する調査結果を発表した。

同じ年に発生したマレーシア航空を巡る2つの事件は共に乗員乗客が全員死亡し、その原因や捜査、調査を巡って数々の情報や憶測が飛び交う「航空界のミステリー」とされてきたが、MH370は消息に関してなんら明らかにされることなく迷宮入りが確実となった。一方、MH17は少なくとも撃墜されたミサイルの保有組織が明らかになり、次はミサイルを発射した組織の解明に捜査の焦点が移る、と明暗のわかれる展開をみせている。

新政権の予算見直しも背景に

2014年3月8日、マレーシアの首都クアラルンプールの国際空港を離陸した中国・北京行きのMH370は乗員乗客239人を乗せたまま消息不明となった。北京に向かっていると思われたMH370はその後、インド洋に向かい消息不明になったことが明らかになった。マレーシアと中国、さらにオーストラリアに日米なども加わった国際的な捜索態勢でMH370をインド洋方面などで探したがものの手掛かりは一切つかめず、パイロットの自殺説、亡命説、事故説などが飛び交う「航空界の最大のミステリー」とされてきた。

捜索はレーダーや通信記録、衛星情報などから最も可能性が高いとされたインド洋東側の約71万平方キロメートルに渡る広大な海域で実施された。

2015年7月29日にはマダガスカル島東方海上の仏領レユニオン島に漂着した航空機の部品とみられる物体がMH370の「フラッペロン」と呼ばれる部品であることが確認されたほか、アフリカ東海岸や周辺の島で翼の一部とみられる残骸や遺留品らしきものが発見されたが、機体そのものや遺体は一切発見されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、7月のドイツ販売が半減 BYDは5倍に

ワールド

プーチン氏、米国の停戦通告に応じる可能性低い 4州

ビジネス

米EU貿易合意は「良い保険」、 混乱続くと予想=E

ワールド

香港、最高レベルの豪雨警報を継続 病院・学校など閉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 5
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 6
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「原子力事…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中