最新記事

動物

渡り鳥をナビゲートする「体内コンパス」の正体が明らかに

2018年4月5日(木)20時50分
松岡由希子

その結果、網膜の「Cry1」と「Cry2」のレベルは概日リズムに従って変動した一方、「Cry4」はいつでも一定であった。磁場を感知する「クリプトクロム」は昼夜を問わず一定のレベルを維持する必要があることから、研究チームでは、「磁場を感知する働きを持っているのは『Cry4』である可能性が高い」と結論づけている。

同様の見解は、カール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルグの研究プロジェクトでも示されている。ヨーロッパコマドリの網膜にある「Cry1a」、「Cry1b」、「Cry2」には概日リズムの変動が認められたものの、「Cry4」にはその変動はわずかしかみられなかった。

シーズン毎に網膜の「Cry4」のレベルを調べた

さらに、この研究プロジェクトでは、ヨーロッパコマドリと渡りの習性がないニワトリを対象に、渡りのシーズンである春や秋とそれ以外の時期において、網膜の「Cry4」のレベルを調べた。

その結果、ヨーロッパコマドリの「Cry4」のレベルは、渡りのシーズンにおいて上昇したが、ニワトリにはこのような変化は認められなかった。研究プロジェクトでは、これらの研究結果をふまえ、「『Cry4』が磁気受容性タンパク質であろう」と考察している。

いずれの研究成果も、「『Cry4』が渡り鳥の"体内コンパス"である」ことを証明するまでには至っていないが、「Cry4」という有力な"候補"が特定されたことは、渡り鳥のメカニズムを解明するうえで大きな前進といえそうだ。

ヨーロッパコマドリの鳴き声


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中