最新記事

朝鮮半島情勢

河野発言、中国に思わぬ一撃か?

2018年4月5日(木)12時48分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

河野外相と王毅外相(写真は2018年1月、北京で会談したときの2人) Andy Wong-REUTERS

河野外相が北朝鮮の核ミサイル活動が活発化していると発言したことに関してアメリカの38ノースが反論。中国外交部も、王毅外相ともども、河野発言を非難している。中国の思惑と米朝首脳会談の可能性を読み解く。

河野外相発言と米研究所の反論

河野外相は3月31日、高知市での講演で、「北朝鮮が核実験をした実験場でトンネルから土を運び出し、次の核実験の用意を一生懸命やっているのも見える」と話した。

それに対してアメリカのジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」が4月2日、「根拠となる動きは確認できない」と反論した。38ノースは最新の人工衛星画像を基に3月23日に、「北朝鮮北東部・豊渓里の核実験場では、過去数カ月に比べて活動は大幅に減少している」と発表したばかりだ。

したがって、河野発言は写真で裏付けられないし情報の根拠が示されていないとした上で、2018年初めに活発だった掘削作業や、人と車両の動きが大きく減っている点を、反論の根拠として38ノースは挙げた。

河野外相はそれに対して、4月3日の記者会見で再反論。「様々公開されている情報を見る限り、実験場を含む核関連施設での活動が続いている」と改めて強調し、核関連施設での活動が続いていると表明したことは正しい見解であると主張している。再反論の根拠は、「38ノースの記事の最後にも、実験場のそばの道路の開発は活発化しているとある」とのこと。

たしかに38ノースの記事は、実験場現場での道路工事に関して、「北朝鮮はなお核実験を続ける心構えがある」と書いてもいる。

王毅外相が河野発言非難を示唆

4月3日、中国政府の通信社「新華社」は、王毅外相(国務委員兼務)が記者会見の席で朝鮮半島情勢に関してコメントしたことを発表した。

それによれば王毅外相は、「平和的対話という手段により朝鮮半島の核問題を解決するというのは、中国の一貫した明確な立場である」とした上で、「なかなか得難いこのチャンスを生かすために、関係各方面は邪魔だてしないで、対話という正しい方向に向かって歩むべきだ。(半島の)非核化推進の過程で、関係各方面は歩みを共にして合理的に安全への配慮(関心事)を解決していくべきだ。同時に、積極的に(朝鮮)半島の平和的構想(メカニズム)を構築し、"双軌併進(そうき・へいしん)"という考え方に沿って半島の安寧を図るべきだ」と表明した。

ほぼ直訳したので、ここで二、三の解説が必要だ。

1.「合理的に安全への配慮(関心事)を解決していくべきだ」とは、いったいどういう意味なのか、このままでは分かりにくい。これは具体的には、「日米が、対話ではなく、今もなお北朝鮮への圧力を強化しなければならないと主張していること」を指しており、国名の明示を避けたために、このような分かりにくい言い方になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

6月完全失業率は2.5%で横ばい、有効求人倍率1.

ワールド

キーウ空爆で16人死亡、155人負傷 子どもの負傷

ワールド

26年の米主催G20サミット、開催地は未定=大統領

ワールド

ウィッカー米上院議員、8月に台湾訪問へ 中国は中止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中