最新記事

貿易戦争

米中の貿易対決、投資家が賭けるトランプの「手札」

2018年3月31日(土)11時25分

3月28日、「賭け」を生業とする米ウォール街の金融マネジャーたちにとって、トランプ米大統領の通商面での対中強硬姿勢は、高額な賭け金がかかったポーカーの手のように見えている。写真はホワイトハウス22日、中国が米国の知的財産権を侵害しているとして最大600億ドルの輸入品への課税方針を署名するトランプ米大統領(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

「賭け」を生業(なりわい)とする米ウォール街の金融マネジャーたちにとって、トランプ米大統領の通商面での対中強硬姿勢は、高額な賭け金がかかったポーカーの手のように見えている。だが彼らは、全力で参加できると踏んでいるようだ。

トランプ氏が貿易摩擦を引き起こすのではないかとの不安は、同氏が輸入鉄鋼とアルミニウムに関税を課す方針を表明し、主要貿易相手国の中国や欧州、隣国カナダから報復措置を受ける恐れが表面化した3月1日以降、ウォール街に渦巻いている。

それ以降、市場はジェットコースターのような展開となっている。

トランプ氏が中国からの600億ドル(約6.4兆円)の輸入品に関税を課すと表明し、中国が米国に「崖から戻る」よう要請しつつ、報復として米国からの輸入品30億ドル相当に関税をかけると反発した23日には、世界で株価が下落した。

だが、中国が交渉に応じる姿勢を見せると、26日に株価は反発。しかし翌27日には、テクノロジー株を巡る神経質な動きが、再び株価を押し下げた。

投資家は引き続き、世界の2大経済大国である米中間の貿易戦争を懸念している。だが大口投資家の中には、トランプ氏の通商戦略を分析しつつ、一稼ぎしようと前のめりになっている人々もいる。

著名実業家だったトランプ氏が2日、「貿易戦争は良いことだ。簡単に勝てる」とツイートし、エコノミストに衝撃を与えた。エコノミストたちは、過去の貿易戦争が、巻き込まれた経済に破壊的な影響を与えたとの証拠を引用している。

「これまでの政権は、中国のような貿易相手国に対してより公平な取引を求めては、葉巻の火を額に押し当てられて消されるような対応を受けてきた」と、フェデレーテッド・インベスターズのポートフォリオマネジャーのスティーブ・キアバロン氏は指摘。「慣例を破るトランプ氏のやり方は、完全に彼なりの交渉戦術だろう」と述べた。

キアバロン氏などは、依然として今年はS&P総合500種<.SPX>が大きく上昇するとの見方だ。

「今のところ、話が出ているのは、特殊な輸入品への少額関税だ。割安なバリュエーションを捉えて投資を始める機会を探している人には、今がそのチャンスだ」と、ランデンバーグ・サルマン・アセット・マネジメントのフィル・ブランカート最高経営責任者(CEO)は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、9月ー3.2万人で予想に反し減少

ビジネス

ステーブルコイン、決済手段となるには当局の監督必要

ワールド

ガザ支援船団、イスラエル封鎖海域付近で船籍不明船が

ビジネス

ECB、資本バッファー削減提案へ 小規模行向け規制
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 10
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中