最新記事

中国政治

習近平国家主席再選とその狙い──全人代第四報

2018年3月19日(月)12時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

3月3月17日、国家主席に再任されて憲法に誓いを立てる習近平国家主席 Thomas Peter-REUTERS

3月11日に正副国家主席の任期撤廃を採決した全人代は、3月17日、習近平を国家主席に再選し、王岐山を国家副主席に選出した。これにより習近平の長期政権が始まる。その目的は何か、中国はどこへ向かうのかを考察する。

習近平国家主席再選と憲法

全人代(全国人民代表大会)は3月11日、中華人民共和国憲法第七十九条にあった「国家主席、国家副主席の任期は二期10年を越えてはならない」という文言を削除する憲法改正案を採決した。これにより習近平氏は中共中央総書記および中央軍事委員会主席以外に、国家主席に関しても任期なしの最高指導者の職位に就き続けることができるようになった。

3月17日、習近平は満場一致で国家主席に再選され、聖書に誓うような形で憲法(が書かれているとされるセレモニー用の装飾的な本)に左手を置き、右手の拳を肩のあたりまで上げて、「憲法を遵守し、人民の監督を受ける」と誓った。

習近平自身に最も都合のいいように憲法を改正して、その憲法に誓いを立てる。

しかも人民の監督を受けると誓いながら、現実には建国以来最強の監視社会に入っている。自由にものが言えないようにするための治安維持費は軍事費を上回っている。

そのような中、「依法治国(法によって国を治める)」というスローガンを叫び続け、「このように中国は法治国家だ」と宣言するその姿には、唖然とするばかりだ。

習近平は同時に中央軍事員会主席にも再選された。全人代(政府側の会議)における中央軍事委員会の全称は「中華人民共和国軍事委員会」で、昨年10月に開催された第19回党大会で選出されたのは「中共中央軍事委員会」の主席だ。二つの「中央軍事委員会」は構成メンバーも主席も同じ人物で、「党」と「国家」の両方に異なる看板で存在しているだけである。

習近平の狙いは何か?

習近平政権が誕生した2012年11月の第18回党大会開会式で、胡錦濤元総書記は中共中央総書記として最後のスピーチをした。そのとき最も特徴的だったのは「腐敗問題を解決しなければ、党が滅び、国が滅ぶ」という言葉だった。この同じ言葉を、中共中央総書記に選出された習近平は閉会式のスピーチで繰り返した。

こうして反腐敗運動が始まったのである。

人民の味方であり、清廉潔白を旨として発足したはずの中国共産党は、党幹部が利権集団となり、救いがたいほどに底なしの腐敗が蔓延していた。その後の5年間で処分された大小さまざまな党幹部の数は200万人を超える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

メキシコ当局者、中国EV現地生産に優遇策適用せず 

ワールド

WHOと専門家、コロナ禍受け「空気感染」の定義で合

ワールド

麻生自民党副総裁22日─25日米ニューヨーク訪問=

ワールド

米州のデング熱流行が「非常事態」に、1カ月で約50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中