最新記事

北朝鮮情勢

トランプは金正恩を利用しているだけ、戦争する気はない

2017年11月21日(火)15時07分
ジョン・ハルティワンガー

北朝鮮をテロ支援国家に再指定したのもトランプ一流の目くらまし? Joshua Roberts-REUTERS

<米空軍の元将校は警告する。「トランプは北朝鮮がどこかも知らない。アメリカ人の目を外に向けようとしているだけだ」>

米空軍の元情報幹部は、アメリカ人に警告する。北朝鮮の金正恩党委員長とその体制に対するドナルド・トランプ米大統領の大げさな先制攻撃のレトリックに目を奪われるな、と。

「あれは子供の喧嘩だ」と、韓国で長年北朝鮮に関する諜報活動に携わったエリック・アンダーソン中佐はこう本誌に語る。「ドナルド・トランプは、地図の上で北朝鮮がどこかもわからないだろう」

アンダーソンによれば、北朝鮮はアメリカと戦争を始めても何も得るところがない。だがトランプは、北朝鮮のこけおどしを本物のように扱って、一時的にせよトランプ政権内部の混乱から人々の目をそらすのに成功した。

「内政がうまくいかなくなると、外に目を向けさせようとするのは指導者の常だ。北朝鮮はおあつらえ向きのエサだった。中国やロシアより指弾しやすいし、『北朝鮮はそれほど脅威じゃないよ』と言えるほど北朝鮮に詳しいアメリカ人もほとんどいない」

アンダーソンは、北朝鮮と戦争になるのが本当に心配なら韓国を見よ、と言う。北朝鮮の脅威を誰よりよく知っているのが韓国だ。韓国の首都ソウルは、南北の軍事境界線から50キロほどしか離れていない。北との戦争に備え、18~35歳の男には21カ月の兵役が義務づけられている。だが、こうして日頃から北朝鮮との有事に備えている韓国でさえ、北朝鮮の核・ミサイル開発が少し進んだからといって戦争!と騒いだりしない。

韓国人を見よ

「韓国人の様子をよく見て、よく聞くべきだ。もし風向きが急に変わるようなら心配すべきだし、もし変わらないなら遠いワシントンで勝手なことを言うべきではない。もし韓国人がうろたえていないなら、我々が騒ぐ理由もない」と、アンダーソンは言う。

仮に北朝鮮との軍事衝突のようなことがあっても、米軍は十分に備えができているし、北朝鮮もそうした戦争が体制の崩壊につながることを知っている。金政権が最も避けたいシナリオだ。金正恩はアメリカ人が思うよりずっと理性的なのだという。

「アメリカにとって北朝鮮は生存を脅かす敵ではないが、北朝鮮にとってアメリカは生存を脅かす存在だ」と、かつて韓国駐留米軍の副司令だったジャンマルク・ジョウアス中将は言う。「相互確証破壊による抑止はない。もし戦えば、確実に破壊されるのは北朝鮮だけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統、強権的な指導者崇拝を批判 中国軍事パレー

ワールド

セルビアはロシアとの協力関係の改善望む=ブチッチ大

ワールド

EU気候変動目標の交渉、フランスが首脳レベルへの引

ワールド

米高裁も不法移民送還に違法判断、政権の「敵性外国人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中