最新記事

韓国

「トランプ歓迎会に元慰安婦」の陰に中国?

2017年11月8日(水)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ大統領アジア歴訪、韓国の晩餐会で文在寅大統領(右)と Jonathan Ernst-REUTERS

11月7日、ソウルでのトランプ大統領歓迎会に元慰安婦を招待し独島エビを供した韓国の行動の裏には中韓合意文書がある。サンフランシスコからのメールがそれを裏付ける。トランプ大統領は事前に知っていた可能性がある。

大統領歓迎会に元慰安婦を招待する神経

韓国は日本に負けじと、トランプ米大統領の歓迎に注力し、国賓として迎える態勢を取っていた。だというのに、7日の歓迎夕食会に元慰安婦を招待するだけでなく、韓国が領有権を主張している竹島(韓国名、独島)の名を冠した「独島エビ」を夕食に供した。

トランプ大統領が先の国連総会演説で拉致問題に触れたことにより日本の拉致問題が国際化し、かつ今般の訪日で拉致被害者に面会したことの向こうを張って、トランプ歓迎夕食会に元慰安婦を招くという、一見、韓国の狭量な発想のように見えるが、そこには日米分断を図る意図が滲み出ている。

今は「北朝鮮問題をいかにして解決するか」ということが国際的共通テーマであるはずで、日本がかつて「侵略行為」を行なったか否かを論ずる時ではないし、ましていわんや情報が不確かな慰安婦問題を持ち出してくるタイミングではなかろう。

慰安婦問題に関しては2015年末に日韓合意で「不可逆的解決」を誓ったはずで、これは当時の朴槿恵(パク・クネ)大統領がどうしても中国に接近して日米韓協力に離反する行動を取り続けるので、北朝鮮問題に関して不利と見たアメリカ(当時のオバマ政権)が朴槿恵を説得して持ち込んだ日韓合意だったはずだ。

一方、中国としては「南京大虐殺資料」とともに「慰安婦問題資料」を世界記憶遺産に登録するため韓国の協力が必要だったこともあり、何としても韓国を引き入れたいと思っていた。だから「習近平・朴槿恵」蜜月が実現していた。

このように日韓が反目しあっていては日米韓協力がうまくいかないことから、アメリカは朴槿恵を説得したわけだ。そして中国の反対に抗して韓国にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備することにも賛同させた。

政府間で合意しておきながら、文在寅(ムン・ジェイン)は、朴槿恵政権を覆し大統領に当選するために、韓国の一部の民意に迎合して朴槿恵政権時代の合意に反対する主張を選挙演説で強調した。それが慰安婦問題であり、THAADの韓国配備でもあった。

THAAD配備により中国から経済的な制裁を受けていた韓国は、何としても中国のご機嫌を取りたい。こうして出てきたのが、11月7日付のコラム「中国はトランプ訪日をどう見ているか」で書いた「中韓合意文書」なのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

WHO、成人への肥満症治療薬使用を推奨へ=メモ

ビジネス

完全失業率3月は2.5%に悪化、有効求人倍率1.2

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中