最新記事

米外交

初外遊は日韓「謝罪ツアー」、新国防長官マティスの狙い

2017年2月2日(木)10時38分
アレックス・ウォード(ブレント・スコウクロフト国際安全保障センター副所長)

Mark Wilson/Getty Images

<トランプ米政権のマティス国防長官が2日に韓国、3日に日本を訪問する。思い出されるのは、8年前のオバマの外遊だ>

8年前、就任間もないオバマ前米大統領が行った2度の外遊は、一部で「謝罪ツアー」と揶揄された。実際、オバマの各国訪問は、前任者のジョージ・W・ブッシュ大統領との違いを印象付けると同時に、アメリカが同盟国や世界の国々を軽んじたり、ばかにしたりしないと安心させることを目的にしていた。

今週のマティス国防長官の日韓歴訪は、オバマの謝罪ツアーを思い出させる。国防長官が新政権発足早々に両国を訪れる目的は、「両国との不朽の同盟に対するアメリカのコミットメントを再確認し、3カ国の安全保障上の協力を一層強化する」こととされている。端的に言えば、トランプ大統領の選挙戦での発言を「謝罪」するのが狙いだ。

トランプは選挙戦中、日本と韓国に自主防衛と核武装を促すような発言をした。アメリカとの強固な同盟を通じて北朝鮮や中国の脅威に対処したい両国は、これを快く思わなかった。

このトランプ発言を放置すれば、由々しき結果を招く恐れがある。アメリカが日韓との連携を弱めた状況で地域情勢が緊迫すれば、両国で核武装論が高まっても不思議はない。そうなれば、ただでさえ緊張を増している地域が一触即発になる。つまり、日韓を核武装に向かわせないために新政権が同盟堅持を約束することは、アメリカの安全保障上の国益と世界の秩序を守ることにつながる。

そこでマティスは、アジアへ旅立った。トランプの選挙戦での発言と「アメリカ第一主義」の主張を微修正し、重要閣僚が今も両国との関係を重視していることをアピールしなくてはならない。トランプがTPP(環太平洋経済連携協定)を実質的に葬り去った今、その必要性はさらに強まっている。

今週、マティスの肩にかかっている責任は重い。

【参考記事】次期米国防長官の異名を「狂犬」にした日本メディアの誤訳

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イランの核兵器完全放棄望む 特使派遣の

ビジネス

金価格、年内に3000ドル割れも 需要低迷と成長見

ビジネス

韓国、対米通商交渉を加速へ 米韓首脳会談は中止

ワールド

貿易協議で合意の可能性あるが日本は「タフ」=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 9
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中