最新記事

テロ

ISISが臓器摘出認める宗教見解、相手の宗教は問わず

テロ組織が資金獲得のために臓器売買を実施している可能性を示す証拠という指摘も

2015年12月25日(金)17時07分

12月24日、過激派組織「イスラム国」のイスラム学者が、臓器の摘出を認める宗教見解を示していたことが、ロイターが確認した文書で明らかになった。写真はシリア国境に掲げられた同組織の旗。8月にトルコ側から撮影(2015年 ロイター/Murad Sezer)

 過激派組織「イスラム国」のイスラム学者が、臓器の摘出を認める宗教見解(ファトワ)を示していたことが、ロイターが確認した文書で明らかになった。米当局者らは、文書は米軍特殊部隊がシリア東部で5月に実施した作戦で入手したとしている。

 米政府の翻訳によると、同組織の「研究ファトワ委員会」は2015年1月31日付の文書で、イスラム教徒の命を救出するために生きている捕虜から臓器を摘出することは許されるとし、たとえ捕虜が死亡することになっても認められる、との見解を示した。

 また「背教者の命と臓器への配慮は不要で、摘出することで処罰を受けることはない」とした。文書では「背教者」の定義は示されていない。

 ロイターはこの文書の信ぴょう性を確認できていない。また、「イスラム国」が臓器の摘出や売買に実際に関与したかどうかは文書では明らかになっていない。

 イラクのアルハキム国連大使はロイターに対し、「イスラム国」が資金獲得のため臓器売買を実施している可能性を示す証拠として、国連の安全保障理事会が文書を調査すべきだとの考えを示した。

 アルハキム氏は2月に、イラクのモスルで臓器摘出を拒否した医師12人が殺害されたとして、安保理に調査を要請した。

 対「イスラム国」でオバマ米大統領の有志連合特使を務めるブレット・マクガーク氏はインタビューで、米軍特殊部隊が5月に行った作戦でパソコンのハードドライブ、CD、DVDなど大量のデータが発見されたと述べた。

 作戦では「イスラム国」のアブ・サヤフ幹部が殺害され、妻が拘束された。同幹部は組織の資金源である原油・ガス取引などを指揮していた。

 マクガーク氏を含む米高官は、文書で示された見解に従い同組織が臓器摘出を実施したかどうかは確認できていないと述べた。

※米政府による同文書の英文翻訳はこちらをご覧下さい。

[ワシントン 24日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2015トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中