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ローマ法王もたじろぐ「反キリスト」中国の教会弾圧

2015年10月14日(水)16時30分
楊海英(本誌コラムニスト)

 まず、「宗教はアヘン」とのイデオロギーを中国共産党が放棄しない点だ。「外国の反中国勢力は宗教を利用して中国を転覆しようとしている」として、警戒を緩めない。キリスト教徒が外国に憧れるのを防ごうとして、教会を破壊したり、十字架を引き下ろそうとしたりする暴力事件が中国内で頻発している。

 次に、信教の自由のない中国で、政府系の「三自会」や「愛国会」を敬遠する信者たちは独自の場所に秘密裏に集まってミサを行う。これを当局は「地下教会」と断定して信者を逮捕、拘束し、両者の対立は先鋭化している。バチカンは司教の任命権を確保しようとしているし、中国共産党は逆に任命権こそが外国の干渉の手口だとみて排除しようとしている。

 第3に、中国はバチカンに関係正常化の前提条件として台湾との断交を掲げているが、バチカンは台湾の「教友たちを捨てる」決断を容易に下せない。

 大勢のクリスチャンに正しい福音を伝えるのを優先すべきか、それとも共産党統治下で殉教者が続出するのを黙認するのか。法王は習の動きを見極めながら模索中であろう。

[2015年10月13日号掲載]

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