地域の伝統の保護と、旅館経営の両立を...星野リゾートが重視する「CSV経営」とは
「界 箱根」の温泉大浴場
<星野リゾートが手掛ける温泉旅館ブランド「界」では、地域の伝統工芸品を取り入れた旅館経営を行っている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」では、CSV経営に則り、地域の課題解決に貢献する活動を展開している。その一つが、地方の伝統工芸品や伝統文化の継承を支援する活動だ。全国に展開する温泉旅館ブランドである強みを活かし、旅行者の興味関心を高め、伝統工芸品の認知向上や購買に繋げている。
経済価値と社会価値を両立する「CSV経営」で、地域課題の解決を目指す
「CSV(Creating Shared Value)」とは、企業が営利組織として利益を追求しつつ、同時に事業の中で社会課題の解決に取り組むための考え方だ。昨今、企業におけるSDGs達成の手段として注目を集めている。
日本全国でリゾート施設を運営する 星野リゾートは、CSV経営を重視し、「ホテルと地域は一心同体」という考えのもと、各施設で地域の課題解決を目指すさまざまな活動に取り組んでいる。
日本の各地域が抱える課題の一つとして、伝統工芸品や伝統文化の継承が危機的状況にあることが挙げられる。生活様式や社会経済の変化、安価な類似品の流入によって、伝統工芸品の需要が減少していることで、生産額や従事者数が減ってきているのだ。
この課題にフォーカスした取り組みを行っているのが、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」だ。全国にある22施設で、伝統工芸や伝統文化の継承を支援する取り組みを推進している。
「その土地の伝統文化や伝統工芸などを温泉旅館のおもてなしに活用し、『界』が旅行者と地域を繋ぐ架け橋になることで、次の世代に継承されることを目指しています。地域の魅力が高まることは、ホテルの業績にも直結します」と、星野リゾート オペレーションマネジメントグループ サスティナビリティ推進担当の小泉真吾氏は語る。