日本の住宅や店舗で「黒」のスイッチやライトが求められるようになった理由

隠すべきものから、あえて見せたいものへ

では、実際に空間をデザイン、コーディネートする側から見ると、「BLACK DESIGN SERIES」はどのような可能性を持つのだろうか？

インテリアスタイリストの大谷氏は、「黒にはクールでかっこいいイメージや男性らしいイメージがありますが、最近はオークの家具などを採用したナチュラルで優しいインテリアに、アクセントカラーとして黒を取り入れることが増えています」と話す。

大谷氏はパナソニックをはじめとする企業の広告のビジュアルや、雑誌などで数多くのインテリアスタイリングを手掛ける。

「私自身は生活感のあるナチュラルなスタイリングを得意としているのですが、そうした中でもナチュラルで優しいだけでなく、野暮ったく見えないようにというオーダーも多く、その際には黒をアクセントに用いることがよくあります」

「『BLACK DESIGN SERIES』は黒やグレーの壁にもよく馴染み、デザイン性の高さも魅力です。インテリアスタイリストとしては、これまで隠すことを前提としていたスイッチやダクトなどを、あえて見せるという手法も使えそう。住空間にこだわるユーザーの目線で見ても、インテリアの幅を広げてくれるプロダクトだと思います」

インスタレーションを手掛けた佐々木氏。藤本壮介建築設計事務所を経て、2021年にaxonometric Inc.を設立した。福岡を拠点に包括的な空間デザインを行う大注目の若手建築家だ

一方、建築家の佐々木氏は、「これまでは黒やグレーの壁で主張しすぎてしまう白色のスイッチなどを、黒色に塗ることもあった。保証がなくなってしまうんですけど（笑）」と明かす。

「今回、『BLACK DESIGN SERIES』となったことで、パナソニックの製品ラインナップに黒色の電気設備がこんなにあるんだと驚きました」

「我々のような建築家からすると、まさに待ち望んだプロダクト。スイッチやコンセントなど一つひとつを見ても、黒色の表現やデザインが非常に洗練されていて美しく、従来はクライアントに見せるパースなどに書き込まなかったスイッチ類などが、主役になり得る可能性すら感じています」

インスタレーション展示「BLACK LANDSCAPE」。使用されている数百もの照明器具やスイッチ類などはすべて「BLACK DESIGN SERIES」の製品群

インスピレーションを刺激する緻密なプロダクト

佐々木氏が手掛けたインスタレーションでは、同シリーズの数百のスイッチやコンセント、煙探知機などを使い、幾何学的でありながらどこか有機的な美しさを感じられる不思議な景観が表現された。

「各プロダクトの緻密に設計された美しいシルエットを生かし、自然界にない純粋な黒の製品を大量に集めて並べることで、葉が集まって森になったり、傾斜のある大地が地形を形作ったりするような、有機的な空間を表現できないかと考えました」

「BLACK LANDSCAPE」と名付けられたインスタレーションは、そう佐々木氏が話す通り、遠目に見ると木々が集う森や大地の起伏、さらには街のようにも見える。ちなみに3日間の展示を終えると、製品の一部は佐々木氏が設計を進めるホテルなどのプロジェクトに活用される予定という。