最新記事

コミュニケーション

「世界でもっとも有名なセレブ女性から電話番号を聞きだす」 ハリウッドの伝説のナンパ師が使った禁断のワザ

2022年1月16日(日)13時00分
橘 玲(作家) *PRESIDENT Onlineからの転載
2001年のMTVビデオミュージックアワードで蛇を巻きつけながらパフォーマンスするブリトニー・スピアーズ

2001年のMTVビデオミュージックアワードでパフォーマンスを務めたブリトニー・スピアーズ REUTERS/Gary Hershorn


「異性にモテる人」はどんなテクニックを使っているのか。アメリカのある音楽ライターは、ナンパのテクニックを磨きあげることで、2000年代はじめに「世界でもっとも有名な女性」となっていた歌手のブリトニー・スピアーズから連絡先を聞き出すことに成功している。彼が使ったワザとはどんなものだったのか。作家の橘玲氏が紹介する――。

※本稿は、橘玲『裏道を行け ディストピア世界をHACKする』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。

自由恋愛の時代にモテる秘訣

1970年にエリック・ウェバーが"How to Pick up Girls!(女の子をピックアップする方法)"を出版し、Pickup(ナンパ)という言葉を定着させた(※1)。

それから30年後、30代前半の音楽ライターであるニール・ストラウスはこの神話的人物に会いにいった。ウェバーは広告のクリエイターとして成功し、ナンパ本を書いた頃に知り合った女性と結婚して、2人の娘のいる家庭を築いていた。

ウェバーがナンパ術を会得しようとした背景には、60年代アメリカの大きな文化的変化があった。

それまでは、若者たちは教会の集まりのような地域のコミュニティで相手を見つけ、結婚していた。ところが60年代になると、大学進学や就職で親元を離れ、都会で一人暮らしをするようになる。女性たちはピルを飲みはじめ、カウンターカルチャーやヒッピー・ムーブメントが社会を揺るがせ、カジュアルセックスが当たり前になった。

このライフスタイルの変化によって自由恋愛の時代が到来し、都会の若い男たちは、独身者用のバーやパーティ会場で女性と出会い、会話し、恋愛関係をつくらなければならなくなったが、誰もその方法を教えてくれなかった。

そんなときウェバーは、一緒にコピーライターの見習いをしていた友人が、公園で魅力的な女性に声をかけ、やすやすと金曜のディナーの約束を取りつけるのを見た(友人はその夜に処女の彼女とセックスまでしていた)。

見ず知らずの女性を和ませる友人の天性の会話力に驚いたウェバーは、自分も同じことができるようになりたいと思った。そして、「スチュワーデス、モデル、タレント、OL、秘書、編集者、学生」など「独身の可愛い、ギャルたち」にインタビューして、彼女たちが男に何を求めているかを語ってもらった。

ウェバーが発見したのは、「女の子は、声をかけられるのを、いまかいまかと待っている」ことだった。

多くの女の子は、いつも新しい男性との出会いを求めている

ナンパについてボニーは、「どんな女の子だって喜んじゃうわ。当然じゃない」といい、リンダは「あったりまえよ。ステキな男のコと知り合う絶好のチャンスじゃない。だいいち、いちばんスマートなきっかけだわ」とこたえた。

いまなら違和感があるかもしれないが、1960年代末のアメリカでは、都会で一人暮らしをする女性たちもパートナーと出会う機会を積極的に求めていたのだ。

ウェバーは、どれほど幸福そうに見えても、女の子たちが満たされない思いを抱いていることに驚いた。半世紀以上前の「魅力的な女性」の言葉は、現代とまったく変わらないだろう。

books20210116.png私はいつも淋しいわ。女の子って、みんなそうじゃないかしら。私たちはみんな孤独でしかも退屈しているのよ。いつも不安定な人間関係に囚われて、疲れてもいるし。楽しい人間関係が生まれたらうれしいわ。私は望まれている、とか、愛されているとか思いたいのよ。だからこそ多くの女の子は、いつも新しい男性との出会いを求めているのよ。

こうしてウェバーは、「自分に自信がなく、愛されたいと思っている等身大の女の子たち」が望むような男になることが、モテる秘訣だと説いたのだ。

スピードナンパ術という秘技

1970年代のナンパ術が「女が望むような男になる」だとすれば、その流れを大きく変えたのがロス・ジェフリーズという「背が高くガリガリで、あばた顔で自他ともに認めるオタク」だった。ニール・ストラウスによれば、現代のナンパ・テクノロジーは、1988年にジェフリーズが生み出した「スピードナンパ術」からはじまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中