最新記事

ヘルス

新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体

2020年12月3日(木)17時05分
満尾 正 (医学博士、満尾クリニック院長) PRESIDENT Onlineからの転載

新型コロナウイルス感染症では、サイトカインストームから急性呼吸窮迫症候群(肺炎や敗血症などにより重症の呼吸不全をきたす病気、ARDS)を合併し、致死的な経過をたどることが報告されています。

一方で、ビタミンD欠乏症はARDSの一因となることもわかっています。そして、その致死率は、年齢と慢性疾患の併存とともに増加し、どちらも血中ビタミンD濃度の低下に関連すると報告されています。

現時点では、ビタミンDが新型コロナを予防するという確固たるデータはありません。しかし、ビタミンDの持つ免疫調整作用が維持されていれば、サイトカインストームによる致死的な合併症を予防する可能性は十分にあると考えられます。

新型コロナ重症者は明らかに血中ビタミンD濃度が低かった

president201203_Vitamin2.jpg

アイルランドからは、年齢40歳以上の新型コロナ罹患患者33名について経過を調べた報告が出されています。12名は重症化し、ARDSとなり、さらに、このうちの4名が亡くなられていますが、8名は回復しています。21名は重症化せずに回復の経過をたどっています。

図表2は、これらの2つのグループの患者の血液中のビタミンD濃度の平均値を比べたものです。ARDSを合併した12名の方が、明らかに血中ビタミンD濃度が低い傾向が見られます。

よく見ると、軽症群(グラフ左側)でも血中ビタミンD濃度は「16.4ng/ml」ですから、低いことがわかります。アイルランドは緯度の高いところに位置するため、血中ビタミンD濃度を維持することが難しいという事情が関係しているのかもしれません。冬の期間はビタミンDを摂取することを、国が推奨しているということです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランド東部でロシア無人機墜落、イラン製の可能性

ワールド

トランプ氏、2期目就任後に計1億ドル超の債券購入 

ワールド

イスラエル、西岸入植地計画を最終承認 パレスチナ国

ワールド

米、ICC判事ら4人に制裁 国務長官「国家安保上の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 4
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 10
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中