最新記事
不動産

中国人爆買いが転機、今後は「売り手化」のリスク...26年マンション相場に警鐘

2025年12月11日(木)17時10分
写真は東京の夕景。2021年8月、東京スカイツリーから撮影。REUTERS/Marko Djurica

写真は東京の夕景。2021年8月、東京スカイツリーから撮影。REUTERS/Marko Djurica

新築マンション価格の高騰を巡り、国土交通省が外国人による購入実態の調査結果を初めて公表した。2025年上半期の東京23区における海外居住者の取得率は3.5%だった。三井不動産出身で、不動産市場に詳しいオラガ総研代表の牧野知弘氏はロイターの取材に対し、「国の調査は実態の一部しか捉えておらず、『外国人の影響は軽微』と結論づけるのは早計だ」と語った。

その上で、中国人の爆買いについては「すでにピークを過ぎており、今後は強力な売り手に転じるリスクがある」と指摘。26年のマンション市況に関しては「日銀の金利引き上げにより、右肩上がりの相場は終わりを迎える可能性が高い」との見方を示した。

――国交省の調査で判明した外国人取得率は、想定よりも少ない印象だ。

この数字は不動産登記情報という限られたソースに基づいており、実態の一部しか捉えきれていない。例えば、ペーパーカンパニーや(日本人の)名義貸しによる購入などは数字に表れていない。調査期間中にたまたま新築物件の供給が少なかった区では、外国人の取得率が0%となるなど、データの偏りも大きい。

これを根拠に『外国人の影響は限定的』と結論づけるのは早計だろう。都心や湾岸エリアのタワーマンションなど特定の物件に限れば、実際には購入者の半数近くが外国人というケースもあり、局所的な過熱感は調査結果の数字以上に大きいと見るべきだ。

――国・地域別でみると、中国本土の割合は外国人全体の約1割だった。

中国本土の比率は直近のピークの19年から大幅に低下し、現在は台湾が6割を占めるという逆転現象が起きている。中国の不動産不況によって資産価格が下落し、彼らの資金繰りが厳しくなっている。投資損失を穴埋めするために、東京都内の保有物件を売却する動きが出始めていると聞く。中国人による不動産の爆買いは、完全に潮目が変わった。

今後、中国景気が一段と鈍化すれば、日本の不動産市場において『買い手』から強力な『売り手』へと転じるリスクがある。為替が円高基調に転じれば、外国人にとっては(為替差益を得られるため)絶好の売り時となる。

――同調査では、購入後1年以内に物件を手放す「短期売買」の状況も公表された。

調査結果から分かるように、実は短期で転売する人の多くは日本人だ。マンション高騰の原因として外国人が注目されがちだが、数億円の高額物件では、30ー40代の若手富裕層の存在感が非常に高まっている。彼らは居住目的ではなく、明確にキャピタルゲイン(売却益)を狙って物件を購入する。不動産投資で資産を築いただけに情報感度が高く、サヤが抜けると判断すればすぐに動く。不動産協会が転売を禁じる対応方針をまとめたが、対象は契約から引き渡しまでの期間に過ぎず、抑止効果は極めて限定的だろう。

――26年の都内のマンション市況をどう予測するか。

来年は大きな転換点になるだろう。最大の要因は金利だ。日銀による政策金利の引き上げにより住宅ローン金利の上昇は避けられない。ただでさえ生活物価が上がり、一般世帯の実質所得が目減りする中、以前にも増して割高な新築物件に手を出しづらくなる。

すでに湾岸エリアでは異変が起きており、直近の数カ月で売り物件の在庫が倍増する一方で、買い希望者は半減した。売り手は強気の価格を維持しているが、肝心の買い手が付いていけない。需給のミスマッチによる価格調整局面に入りつつあり、右肩上がりの相場はいよいよ終わりを迎える可能性が高いとみている。

まきの・ともひろ 83年東大経済卒。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン・コンサルティング・グループを経て、三井不動産に入社。その後独立し、15年にオラガ総研設立。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2025トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マレーシア、25年貿易額が過去最高 12月輸出10

ワールド

アフガン首都の中華料理店で爆発、中国人ら7人死亡 

ワールド

トランプ氏、ダボス会議でグリーンランド取得を協議へ

ワールド

豪州の大手年金基金、米ドルのエクスポージャー縮小 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 4
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中