最新記事
トラベル

ゼロコロナ終了でも中国人観光客戻らぬオーストラリア 団体旅行認定されず打撃

2023年4月17日(月)12時05分
ロイター
シドニーのオペラハウス前の観光客

中国が今年1月に長期の国境閉鎖を終了すると、電子商取引企業でマーケティングの仕事に携わるティエンニ・レンさん(28)は早速、チームのスタッフ14人によるオーストラリア旅行の計画に取りかかった。シドニーのオペラハウス前で2018年4月撮影(2023年 ロイター/Edgar Su)

中国が今年1月に長期の国境閉鎖を終了すると、電子商取引企業でマーケティングの仕事に携わるティエンニ・レンさん(28)は早速、チームのスタッフ14人によるオーストラリア旅行の計画に取りかかった。ソーシャルメディアで魅了されたピンク色の塩湖が見たかったからだ。

しかし、結局は同僚を連れて行ったのはニュージーランドだった。中国政府が認定する団体海外旅行先のリストから、オーストラリアが除外されたからだ。

450億豪ドル(300億ドル)規模を誇るオーストラリアの国際観光市場では2020年初頭まで、この制度のおかげで中国人観光客が支配的な地位を占めていた。それが、20年ぶりにリストから外れたのだ。

「旅行代理店に問い合わせたところ、オーストラリアは団体旅行リストにないと言われた」とレンさん。「ピンク色の湖を見ることができなかったのは残念」と語る。

中国の認証旅行先ステータス(ADS)では、団体旅行が認められる国として約60カ国を認定している。

オーストラリアでは、中国からの観光客が戻ってくると広く期待されていた。だが、ビザ(査証)の規則に加え、比較的高い旅行コスト、航空便の不足、中国標準語を話すガイドの流出によって極めて低い水準の来訪数にとどまり、オーストラリアで4番目に大きい輸出産業である観光業を圧迫している。

国境再開後の2月、中国からオーストラリアへの短期旅行者は4万0430人だったことが、政府のデータで明らかになった。これは、過去最高年となった2019年の同月の5分の1で、ニュージーランド、英国、米国からの訪問者数に大きく遅れをとっている。

一方、航空分析会社シリウムによると、中国本土からオーストラリアへの航空便の輸送能力は2月時点で、新型コロナウイルスのパンデミック以前の5分の1に縮小している。燃料費の高騰で運賃が上昇し、需要が落ち込んだためだ。

ドイツを拠点とするコンサルティング・グループ、中国アウトバウンド観光研究所によると、中国からの出国者数は、全体的にはパンデミック前の3分の2に回復した。

中国政府はオーストラリアのADS認定を終了した理由を明らかにしなかった。しかし、旅行業界関係者によると、両国の貿易紛争や、安全保障を巡る欧米と中国の対立激化など、地政学上の関係悪化が一因とされる。

オーストラリア政府観光局は、コメントを控えた。

座談会
「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中