最新記事

BOOKS

人生に本は100冊あればいい──紙の本こそが「速読に適したメディア」である理由とは?

2023年3月1日(水)09時53分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

テレビやネット、動画は遅い

もっとも、速読こそ読書の醍醐味とは言える。わたしはテレビもネットもほとんど見ない。テレビやネットがくだらないというのではない。単純に時間がないのだ。

わたしは百姓であり、猟師であり、鴨を解体してレストランに卸す食肉加工業者でもある。また、私塾の塾長として若いライターを教えている。

もちろん、自分自身がライターだ。文章を書くことで生きている。稲作や猟をしつつ、新聞や雑誌に記事を書く。本を執筆する。まず相当に忙しい部類の人間だろう。

わたしがテレビやネットを見ない理由は、だから「速読」しにくいという理由がいちばん大きい。
 
報道番組でもドキュメンタリーでも、じっくり見たい良質な番組はたくさんある。そういうのではなく、偶然目にした番組で、なにか自分の興味を引くトピックが、ふと現れることもある。なんだろう? 気を引く。すると、CMが入るのである。知りたい情報はCMのあとに。

CMのないNHKでも同じである。肝心の知りたい情報に達するまで、BGMが入り、再現ドラマが入り、ゲストコメンテーターのリアクションが入り、スタジオのざわめき声(エーー!)が入る。字幕のあるユーチューブや、録画で見ても同じだ。せいぜい倍速、三倍速。遅すぎる。

それが「単なる情報」であるならば、ストレスなく、短時間でたどり着きたい。情報に、そこまでの時間をかける余裕は、自分の人生の残り時間を考えると、とてもない。映像も「速読」したいのである。

ネットも同じだ。思わせぶりな見出しにつられて画面をクリック。しかし、知りたい情報に至るまで、何回画面をクリックしなければならないのか。ネットもテレビも、「遅すぎる」。

ネットニュースは紙のメディア以上に、「見せ方」を重視する。「有料会員になると続きをお読みいただけます」ボタンをどうすれば押してもらえるか。

釣り、とはいわないまでも、工夫して見出しを考える。リード部分を切る。たしかに上手なもので、続きを読んでみたくなる、ボタンを押したくなるものばかりだ。そして、後悔することが多い。時間がもったいない。

考えてみればあたりまえで、いままで新聞や雑誌、テレビを見ていて、これはためになった、読んでよかった、見てよかったという記事が大量にあっただろうか。ネット時代に移行したからといって、読む価値、見る価値のあるコンテンツ(いやな言葉だ)が増殖する、そんなことあるわけがない。

要は、読み飛ばす、速読することを邪魔しているのだ。読者、視聴者の時間を奪い合っているのが現代だ。時間が、カネに直結する社会。だから、ふつう言われているように、現代は情報過多なのではない。情報過少だ。速読できないように、社会は設計されつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石油輸送管「ドルジバ」、春のうちに修理完了へ=ゼレ

ワールド

中国、台湾周辺に艦船100隻展開 異例の規模で警戒

ビジネス

安川電機、今期純利益33%増見込む AI・半導体関

ワールド

エクアドル、対コロンビア関税100%に引き上げ 国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 7
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 8
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中