最新記事
コロナ禍

欧米サプライヤー、物流混乱で早くもXmas商戦向け出荷が大ピンチ

2021年7月4日(日)10時19分
ロイター
プラガブル・テクノロジーズ創業者バーニー・トンプソン氏

ウォルマートやターゲット、アマゾン・ドット・コムといった主要小売り企業と取引しているサプライヤーはロイターに、今年はクリスマス用商品の発注を例年より何週間も前倒ししていると語った。世界的な物流網の混乱で、肝心の年末商戦本番までに納入できない品が多くなる恐れがあるためだ。写真はプラガブル・テクノロジーズ創業者バーニー・トンプソン氏。2020年2月撮影(2021年 ロイター/Lindsey Wasson)

ウォルマートやターゲット、アマゾン・ドット・コムといった主要小売り企業と取引しているサプライヤーはロイターに、今年はクリスマス用商品の発注を例年より何週間も前倒ししていると語った。世界的な物流網の混乱で、肝心の年末商戦本番までに納入できない品が多くなる恐れがあるためだ。

ロイターは、玩具からコンピューター周辺機器まであらゆる製品を扱う欧米のサプライヤーと小売業者の10社余りを取材。世界的なコンテナ不足や、最近の新型コロナウイルス感染拡大の影響によって世界有数の貿易港である中国南部の塩田港が一時閉鎖されて輸送が滞っていることから、全社がクリスマス向け出荷用在庫の積み上げには遅れが生じると予想している。

小売業者にとっては、せっかく消費者が財布のひもを緩めて積極的に買い物をしようとしている矢先に、店頭の品切れが相次ぐ事態になりかねない。

ロサンゼルスを拠点に、ぬいぐるみの「LOLサプライズ」や人形の「ブラッツ」などの玩具をアマゾン、ウォルマート、ターゲット向けに販売しているMGAエンターテインメントのアイザック・ラリアン最高経営責任者(CEO)は「とてつもない混乱が起きるだろう」と戦々恐々の様子だ。同社の商品は塩田港にある何百個ものコンテナにとどまったままで、顧客に十分な在庫を提供できなければ「年末商戦に打撃を与えてしまう」と懸念する。

塩田港はアマゾンにとっても中国からの出荷量が最も多い場所で、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス傘下のパンジバによると、3-5月の出荷取り扱い全体の32.4%を占める。

ただ同港は24日に再開された後も、コンテナ不足のせいで全面的に稼働していない。世界的に貨物船は予約超過状態となり、コンテナが本来あるべきでない地点に残され、各国の港には商品が滞留している。

このままでは、多くの商品で配送が間に合わず、「シッパゲドン(shipageddon)」と呼ばれたほど混乱が生じた昨年の年末商戦よりも物流の渋滞がもっとひどくなりそうだ。

在庫確保に躍起

ミシガン州立大学エリ・ブロード・カレッジ・オブ・ビジネスのジェーソン・ミラー准教授(サプライチェーン管理)は、小売業者は全般的に商品を仕入れたそばから販売しているのが現状で、売れ行きが非常に高水準なので在庫を大幅に増やすことができないと指摘。情勢に変化がなければ、自動車関連を除く小売業者が2019年の年末商戦前と同じ在庫・売上高比率を達成するには今後約651億ドル(約7兆1500億円)相当もの在庫を積み増す必要があるとの見方を示した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB後任議長選び、「正式プロセス」既に開始と米財

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 6
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 7
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 8
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中