最新記事

株価

「老後2000万円」騒動から1年──コロナ襲来で「つみたて投資」はやめるべきか、続けるべきか

2020年6月26日(金)11時00分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

世界中で経済が縮小すると考える人に長期投資は向かない? sesame-iStock

<積み立てた資産が目減りしていく現状から、「今のうちに投資をやめようか」と思う人も少なくないだろう。コロナ禍の今こそ留意しておきたい、一般投資家の心構え>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年6月22日付)からの転載です。

去年6月の「老後2,000万円」騒動をきっかけに、つみたて投資を始めた人は多い。一念発起して投資家の仲間入りしたものの、1年も経たずにコロナ禍に見舞われ株価が急落。幸い、株価は急回復したが、今後もつみたて投資を続けるべきか。

「老後2,000万円必要」で、つみたて投資を始めた人が急増

2019年6月、「老後資金として年金だけでは2,000万円ほど足りない」とした金融庁の報告書が物議を醸した。国会で大きく取り上げられたほか、メディアやネット上でも政府批判が広まった。

この"騒動"を契機に多くの人が投資を始めたようだ。つみたてNISA(少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度)の口座数は、2019年7~9月に約23.5万口座と過去最大級の増加を記録し、その後も順調に増えている。

Nissei200625_1.jpg

つみたて投資を始めた矢先、株価が乱高下

19年9月以降の世界的な株価上昇で日経平均は2万4,000円を超え、NYダウは史上初の3万ドルに迫った。7~9月につみたて投資を始めた人は「正解だった」と思っただろう。

ところが20年に入るとコロナ禍が金融市場を大きく揺さぶり、日経平均はピークから7,500円超も下落、NYダウに至っては1万1,000ドル近く急落した。せっかく積み立てた資産が3割以上も目減りするのを目の当たりにして恐怖を感じたり、「やっぱり投資は危険だ。今のうちにやめようか」と思った人も少なくないだろう。

その後、各国政府や中央銀行による大規模な政策などを背景に株価は急速に回復した。それでも日経平均・NYダウともに急落前の9割程度の水準なので、株式投信を保有し続けた人の多くは含み損(元本割れ)の状態と思われる。

とはいえ、もし急落時に売り払っていたらもっと大きな損失を「確定」させていたことになる。底値近辺で損切していた場合、「投資なんてコリゴリだ。2度とやるまい。」と思ったことだろう。

誤解を招かぬよう述べておくと、筆者は「急落時に投資をやめなかったから、株価反転の恩恵にあずかれた」なんてことを主張するつもりは毛頭無い。これほど急速に株価が反発することを予想できた人は少ないし、コロナ禍による経済的な打撃で株価の戻りが鈍かった可能性もあるからだ。

Nissei200625_2.jpg

短期の値動きで儲けるのは至難の業

株式には"定価"というものが存在しない。理論的な適正価格は昔から多くの学者が研究してきたが、実際の株価は理論価格から乖離することがほとんどで、図表3のイメージ図のように、理論価格より高くなったり低くなったりを繰り返している。

この短期的な値動きは主に投資家側の考えに基づく需給に左右される。たとえば図表3のAのときに、ある投資家が割安と考えて株式を買っても、多くの投資家が「もっと下がる」と考えれば株価は下がる。逆に、Bのときに売り時と判断して売却したものの、「もっと上がる」と思う投資家の方が多ければ実際の株価はさらに上がる。

Nissei200625_3.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシアGDP、第3四半期は前年比+5.2% 1

ワールド

IMF、2026年のタイ成長率は1.6%に減速と予

ワールド

中国の10月発電量、統計開始以来最高 前年比7.9

ビジネス

中国10月指標、鉱工業生産・小売売上高が1年超ぶり
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中