最新記事

日本社会

日本企業、温暖化危機への対応進まず 洪水への備え半数以下、石炭火力反対は2割どまり

2020年1月18日(土)13時14分

気候変動を念頭に置いて大型台風クラスの風雨水害や気温上昇に対する備えを行っている企業はまだ少数派であることが明らかとなった。写真は2019年10月、長野県の千曲川近くで撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

1月ロイター企業調査によると、気候変動を念頭に置いて大型台風クラスの風雨水害や気温上昇に対する備えを行っている企業はまだ少数派であることが明らかとなった。事業継続計画を策定していても、豪雨や台風による洪水を想定している企業は半数以下にとどまり、気温変化や浸水への備えは手薄となっている。また海外から批判の強い石炭火力発電について、撤退すべきとの意見は2割にとどまった。

この調査は12月25日から1月10日までの期間に実施。調査票発送企業は502社、回答社数は245社程度だった。

供給網確認は7割超 中身は脆弱

災害全般については、地震への備えなど、行政から従来求められている緊急時の事業継続計画(BCP)を策定している企業は77%を占めた。しかし、近年の気候変動による大型台風や豪雨が引き起こす洪水までを想定して策定している企業は45%に過ぎなかった。

「過去に台風による大潮被害で相当のダメージを被った経験があり、常に備えるようにしている」(機械)と、すでに浸水被害を想定している企業もあるが、「台風による風水害リスクが高まっていることから対策を変更している」(輸送用機器)、「これまで異常気象と言われていたような事態が今後は恒常的に発生すると考えて対策中」(卸売)など、昨年の大型台風を教訓にBCPを練り直している企業も目立つ。

自然災害を保険でカバーしている企業は全体の8割にのぼった。サプライチェーン確保への備えも、調達・供給先の立地場所を確認している企業は77%、代替調達先が複数確保されている企業も75%を占めた。「東日本大震災で調達先や外注加工先を複数化するなど、対応を進めてきた」(精密機器)という企業が多い。

ただし、これらの備えも実際の災害時には脆弱な面を抱えていることが明らかとなった。

現状のプランは「輸送経路が途絶えれば困難」(紙パルプ)、「インフラ機能が一定水準維持できることが前提」(機械)など、あくまで交通網が確保されていることが必要だ。

さらに調達先も「1次調達先は確認しているが、2次、3次と先までカバーする形での計画を立てるのは非常に難しい」(卸売)としている。また多岐にわたる原材料の全ての代替先を見つけるのは難しく、「一部の重要部材は単一調達先からのものとなり、一定のリスクがあることは認識している」(精密)といった事情もある。

気候変動を踏まえた対策はまだ始まったばかりのようだ。調達・供給製品について浸水や気温変化に対する耐性があるかどうか確認している企業は54%と半数にとどまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中