最新記事

日米関係

安倍首相、大統領選控えるトランプに通商交渉の早期決着演出? 問題は自動車追加関税

2019年8月26日(月)14時36分

日米首脳会談で通商面での成果を急ぐトランプ大統領に配慮し、早期決着を演出した安倍首相。Carlos Barria - REUTERS

日米首脳は25日の会談で通商交渉の大枠で合意、9月にも予定されている次回の首脳会談で署名を目指す方針を確認した。来年に大統領選を控え、通商面での成果を急ぐトランプ大統領に配慮し、早期決着を演出した恰好だ。ただ、焦点の自動車では、米国の輸入関税撤廃が先送りされたほか、日本車に対する追加関税の発動回避の確約は取れていないもようで、発動期限の11月まで日米間の交渉が引き続き注目される。

大統領選配慮、早期合意演出

主要国(G7)首脳会議(サミット)に合わせフランス・ビアリッツでトランプ大統領と会談した安倍晋三首相は、会見で日米通商交渉が原則で合意したと明らかにし、9月の国連総会前後に予定されている米国での首脳会談で署名を目指す方針を強調した。

戦後、日米間の通商交渉は日本側に厳しい結果となった例が多く、与党内では「日米通商交渉で合意を急ぐ必要はまったくない」との声も多かった。それでも安倍首相や茂木再生相が大筋合意を急いだのは「9月までに合意しないと、日本側で関連法案を臨時国会で通すことが出来ず、再選を目指すトランプ大統領に好ましくないため」(政府高官周辺)。米国は「中国・EUとの通商交渉が座礁しかかっているなか、日本との(交渉で)早期の成果を求めており、日米合意が遅れれば遅れるほど、米側の要求が厳しくなるリスクがある」(政府関係者)との判断もあったようだ。

米、自動車輸入関税撤廃は先送り

首脳会談に同席したライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、日本側が撤廃を要請していた米国による自動車および部品に対する関税ついては変更がないが、農産品では日本で70億ドルを超える規模の市場が開放され、牛肉、豚肉、小麦、乳製品、ワイン、エタノールといった製品が恩恵を受けるとの見解を示した。

昨年9月に両首脳が署名した共同宣言は、日本の農産品市場開放は環太平洋連携協定(TPP)など過去の協定での譲歩内容の範囲とするとともに、米国の自動車生産・雇用を拡大すると明記していた。日本側は日系自動車メーカーの米国現地生産が拡大しやすいよう、米国の関税引き下げを求めていたが、米側は慎重姿勢を堅持したようだ。

一方、トランプ大統領によると、日本は、余剰になっている米国産トウモロコシを購入することに同意した。安倍首相はトウモロコシ購入の「可能性」に言及し、国内の害虫被害に対応し、民間セクターによる米国産トウモロコシの早期購入を支援する緊急措置を講じる必要があるとの認識を示した。九州に上陸した害虫ツマジロクサヨトウにより国内で飼料用トウモロコシを栽培している農家に被害が出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU外相、シリアの宗派間暴力への懸念表明 過激主義

ワールド

米、中国IT企業に制裁 人身に危害及ぼすマルウエア

ワールド

世界の航空業界、25年に収入総額初の1兆ドル突破へ

ワールド

イスラエル、シリア南部に防衛地帯設置へ ゴラン高原
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新研究が示す新事実
  • 4
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    韓国大統領の暴走を止めたのは、「エリート」たちの…
  • 8
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 9
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 10
    ティラノサウルス科の初記録も!獣脚類の歯が明かす…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 7
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 8
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中